『エッフェル塔三十六景』の空間表現

Bibliographic Information

Other Title
  • ―『冨嶽三十六景』との比較―

Search this article

Description

アンリ・リヴィエールは, 日本の浮世絵に魅せられたジャポニスムの版画家である。彼の『エッフェル塔三十六景』は, 北斎の『冨嶽三十六景』に影響を受けて制作されたとされているが, 両シリーズの印象は異なる。本研究では, 両シリーズを空間表現について, 描いた地点と視高および画面上にあらわされた空間の連続性の観点から比較し, その印象の違いを明らかにする。比較によると, リヴィエールはエッフェル塔とその周辺の景色を, 実際の視点から見えたままに画面に描き出しているが、一方北斎は富士山が象徴的に画面内に収まるように大きさと形を調整し, 想像の俯瞰視点によって描いている。リヴィエールは西洋のアカデミックな空間表現方法のもとに描き, 北斎は和洋漢の技法を融合して描き出したと思われる。また, 建設当時非難されていたエッフェル塔と信仰の対象としての富士山の捉え方の違いも, 画面の表現に現われているようだ。その結果, 『エッフェル塔三十六景』に描かれている空間は, 現実の風景を再現しているが, 『冨嶽三十六景』に描かれている空間は, 現実とは異なる独自の景色を描いたものであって, 画面上の空間表現にはその影響を受けておらず, 一つのモティーフを追う連作という形式や, 部分的なモティーフの扱いにのみその影響を残しており, 両者の違いが明らかになった。

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001204636625024
  • NII Article ID
    130001819255
  • DOI
    10.5989/jsgs.38.supplement1_87
  • ISSN
    18846106
    03875512
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • Crossref
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

Report a problem

Back to top