民間R&Dに対する公的支援の間接的波及効果 : NEDO追跡調査のデータ分析

  • 松嶋 一成
    徳島大学大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部
  • 青島 矢一
    一橋大学イノベーション研究センター

書誌事項

タイトル別名
  • The Spillover Effects of Publicly Supported Private R&D : Analysis of NEDO Follow-up Survey Data
  • ミンカン R&D ニ タイスル コウテキ シエン ノ カンセツテキ ハキュウ コウカ : NEDO ツイセキ チョウサ ノ データ ブンセキ

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抄録

本研究は,NEDOプロジェクトに対する詳細追跡調査から得た301件のデータを分析し,公的支援を受けた民間企業のR&Dプロジェクトの波及効果を左右する要因を明らかにした。具体的には,プロジェクトの社内・社外への波及を「技術的波及」,「認知的波及」,「社会関係的波及」に分類した上で,それぞれの波及に影響を与えるマネジメント要因を分析した。分析からは,民間企業のR&Dに対する公的支援が直面する2つの重要なジレンマが浮き彫りになった。分析結果は,第一に,基礎的な研究開発を行うプロジェクトほど技術的波及が大きくなる一方,企業にとって戦略的重要性が高いプロジェクトほど社外への技術的波及が抑制されていることを示していた。公的支援の経済性が問われる中,事業化成果を求めるのであれば,戦略的重要性が高いプロジェクトを支援すべきであるが,それは成果の波及を抑制するという矛盾を孕むことになる。第二に,社内の他部門との情報交換が社内外への波及を促進していることも明らかとなった。公的支援への依存が高くなると社内他部門とのやり取りが減少するという既存研究の結果を踏まえると,公的支援自体が波及効果の低下を招く可能性があることを示唆している。これらの結果は,公的支援にあたっては,目的に合わせて適切なプロジェクトを選択すること,支援対象のプロジェクトが社内で孤立しないように配慮することが必要であることを示している。

収録刊行物

  • 研究 技術 計画

    研究 技術 計画 30 (3), 221-239, 2015

    研究・イノベーション学会

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