フェミニズムは地球を救うか? : カイロ・プログラム再考

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タイトル別名
  • Feminist's Approach to Population Problems : New Paradigm or Utopia?
  • フェミニズム ワ チキュウ オ スクウ カ カイロ プログラム サイコウ

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抄録

1994年9月に開催されたカイロ会議からすでに2年半が経過したが,それ以前の国連会議とは異なり,その記憶は常に新しい。フェミニズムを直正面に押し出したカイロ人口行動プログラムの当否をめぐり,現在でも盛んな論争が続いている。それは,カイロ会議がこれまでとは違った新しい人口問題解決のためのパラダイムを示したからである。カイロ会議の中心テーマは女性のエンパワーメントであり,そのキーワードはリプロ・ヘルスである。行動プログラムは,女性のエンパワーメントなくしては,世界人口安定化も人口問題の解決もないというスタンスに立ち,人口のあらゆる分野においてこのモティーフの実現を試みている。これに対して,これまで伝統的に人口政策に関係してきた人口学者は,カイロの新鮮かつ大胆な考え方に圧倒され,眩惑されながらも,多くは徐々にそれに対する複雑な反応を表現し始めているように見える。本稿は,特にアメリカの人口学者たちが最近議論している懸念・批判を紹介し,カイロ会議の意味をもう一度考えてみた。女性のエンパワーメントによって,地球人口の安定化は達せられるかどうか。カイロ文書は,女性の地位向上・役割の拡大そのものが目的で,人口は二の次になってはいないだろうか。リプロ・ヘルスはレッセ・フェールであり,それだけで人口安定化が達せられるのであろうか。リプロ・ヘルスはこれまでの家族計画活動の勢いをそぐ結果にならないだろうか,等々の疑問が生ずる。しかし,いくたの批判があるとはいえ,フェミニズム的行動計画が昔の方向へ後戻りすることはあり得ない。今後の課題はその不備・欠陥を補い,その発想を実際の問題解決のために具体的に翻訳することである。

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