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- 勝野 真人
- 国立公衆衛生院・衛生人口学部
書誌事項
- タイトル別名
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- On the Relation between Mortality Levels and Age Distributions of Deaths
- 死亡水準と死亡年齢分布との関連について〔英文〕
- シボウ スイジュン ト シボウ ネンレイ ブンプ ト ノ カンレン ニ ツイテ
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説明
一般に,特定年齢以上死亡割合は年齢別死亡率よりも死亡登録の不完全性,年齢申告の不正確性など,発展途上国におけるデータ上の問題の影響を受けにくいという利点がある。例えば, Swaroopと, Uemuraの提唱した50歳以上死亡割合(PMI: Proportional Mortality Indicator)は,このような途上国間の保健水準の比較に簡便かつ有効な指標として知られる。しかし,本来PMIは各年齢階級における死亡率の相対的水準のみを反映するもので,人口構成の影響をも含んでおり,平均寿命のように年齢階級別死亡率の絶対的水準を集約した死亡指標に比べて,死亡水準との関係はかなりおおまかなものと考えられていた。そこで,今回筆者はPMIの値が死亡水準と実際には極めて密接な関係を持っていることを証明するべく,国連が収集した43の発展途上国の78組の男女別生命表と日本の1920年以降の12組の男女別生命表の合せて90組, 180表の生命表を分析した。これらは全て充分に吟味された信頼性の高い生命表であり,その平均寿命の値は約36年から80年までの幅広い範囲を網羅しており,様々な人間集団の死亡状況の適切なサンプルとみなしうる。分析内容は生命表のl(x)関数の各年齢における値と平均寿命との関係である。l(x)の値の範囲は今回検討した最高年齢である65歳まで年齢が高くなる程広くなる。しかし,散布図を観察すると,l(x)の値は50歳から60歳の範囲において平均寿命との関連が最も強くなり,この範囲ではほぼ直線的な関係を示すことがわかった。そこで, 5歳毎の各年齢におけるl(x)値と平均寿命との相関係数が男女別及び男女合計の3セットについて算出された。その結果, 50〜60歳のl(x)値については,相関係数はおよそ0.99と極めて高い値を示した。生命表の定常人口は,特定の年齢階級別死亡率と完全に均衡する水準の出生力によって人口が静止状態に達した時の人口構成を示しているが, l(x)値はこの定常人口における特定年齢以上の死亡割合に相当する。一方,平均寿命は定常人口における総死亡率の逆数である。従って上記の結果は,一般に静止状態の人口間では, 50〜60歳の特定年齢以上死亡割合を用いて平均寿命と同様に年齢階級別死亡率の総合的水準を比較しうることを示している。また,この結果はBrassの生命表理論にも合致するものであり,一つの経験的死亡法則とも言うべきものと考えられた。なお,実際人口におけるPMIの値は,人口転換が進展してその人口構成が静止人口に近づくほど生命表のl(50)の値に近づいていくことになるが,人口転換の達成を公衆衛生の最終目標と考えるならば, PMIは人口転換の進度を調整した死亡水準を表すものというように解釈できるものと考えられた。
収録刊行物
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- 人口学研究
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人口学研究 12 (0), 1-10, 1989
日本人口学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001204645087616
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- NII論文ID
- 110009827257
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- NII書誌ID
- AN00120134
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- ISSN
- 24242489
- 03868311
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- NDL書誌ID
- 2945545
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- 本文言語コード
- en
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- データソース種別
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- JaLC
- NDLサーチ
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可