SS1 骨免疫学から見た関節リウマチの病態と治療

  • 高柳 広
    東京大学大学院医学系研究科 免疫学

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抄録

<p>  骨代謝と免疫の境界領域である骨免疫学は,炎症性骨破壊疾患である関節リウマチの骨破壊の研究に端を発するが,免疫系ノックアウトマウスの解析や骨髄における造血幹細胞の研究など幅広く発展しつつある.</p><p>  骨免疫学的な視点から関節炎病態の理解が進む中で,TNFなどの炎症性サイトカインを標的とした抗体医薬が臨床応用され,さらに多くの分子が創薬標的となり開発が進んでいる.関節リウマチに伴う骨破壊を引き起こすT細胞を探索する中で,Th17が破骨細胞誘導を介して組織破壊に直接関わることが明らかになった.近年,炎症関節においてTreg細胞が病的なTh17細胞に転換して病態に大きく寄与することが明らかになった.免疫複合体による直接的な破骨細胞制御の解明により自己抗体と骨破壊の連関も解明されつつある.</p><p>  骨免疫学における近年の課題の一つは,骨髄内に存在する骨制御細胞(破骨細胞,骨芽細胞,骨細胞)および免疫系細胞の相互作用を司る分子機構の解明である.骨リモデリングにおける主要なRANKL発現細胞が骨細胞であることを証明したRANKLコンディショナルノックアウトマウスを用いて,腸管免疫で重要なM細胞分化誘導細胞の同定にも成功した.γδT細胞の骨折治癒での役割や,敗血症における免疫不全における骨芽細胞の役割など最新の話題にも触れ,骨免疫学の歴史と現状を概説し,関節リウマチ治療応用への展望を述べる.</p>

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