クエン酸含有重炭酸透析液の基礎的研究

書誌事項

タイトル別名
  • Fundamental study of a bicarbonate dialysate acidified with citric acid
  • クエンサン ガンユウジュウ タンサン トウセキエキ ノ キソテキ ケンキュウ

この論文をさがす

抄録

クエン酸含有重炭酸透析液について基礎的検討を行った.対象はカーボスター®L(CL)でキンダリー®AF2号(K2),キンダリー®AF3号(K3)と比較した.CL,K2,K3を規定の混合比率で希釈後,密閉状態でイオン化Ca(iCa),総Ca(tCa),pH,pCO2を48時間経時的に測定した.炭酸塩析出について,非密閉状態のCL,K2を偏光顕微鏡400倍にて結晶数と結晶面積を測定した.A剤による機器部材の劣化およびブドウ糖分解について,CL,K2のA剤にフッ素ゴム部材,SUS316を密閉状態で4か月間完全浸漬させSUS316からの溶出金属測定,およびフッ素ゴム部材の電子顕微鏡観察および引張強度・引張伸度測定を行った.ブドウ糖の安定性について,CL,K3において加速試験(40℃)と苛酷試験(50℃)を行い,分解物として3-デオキシグルコソン(3-DG),5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF),レブリン酸濃度を6か月間測定した.tCa(mg/dL)は開始時点でCL:5.8,K2:5.7,K3:4.8であり安定していた.iCa(mmol/L)は開始時点ではCL:0.82,K2:1.23,K3:1.09とCLが最も低値であり,これは4時間まで持続した.4時間までのCaのイオン化率(iCa/tCa比)の平均は,CL:0.64,K2:0.84,K3:0.91とCLが最も低値であった.pHでは全液において時間の経過とともに上昇,pCO2は低下した.結晶面積ではCLがK2に比し増加したが,個数には差はなかった.フッ素ゴム部材の劣化および金属溶出では各液間に差は認められなかった.ブドウ糖安定性試験では,3-DGはK3がCLより高値であった.5-HMFではCLがK3より高値であり,CLで分解が進行していることが示された.レブリン酸は各液で検出感度以下であった.クエン酸含有重炭酸透析液では,機器腐食に関しては問題なかったが,クエン酸のキレート作用と炭酸Caの生成促進によるiCa濃度の低下とブドウ糖分解の促進が生じており,実際の使用にあたっては注意が必要であることが示された.

収録刊行物

参考文献 (37)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ