透析患者の生命予後に影響する因子の解析―血清アルブミン値などの栄養指標に基づいて―

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タイトル別名
  • Analysis of factors affecting the prognosis of a hemodialysis patient-Focusing on albumin and parameters of nutrition-
  • トウセキ カンジャ ノ セイメイ ヨゴ ニ エイキョウ スル インシ ノ カイセキ ケッセイ アルブミンチ ナド ノ エイヨウ シヒョウ ニ モトズイテ
  • -Focusing on albumin and parameters of nutrition-
  • ―血清アルブミン値などの栄養指標に基づいて―

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抄録

血液透析(HD)患者の栄養指標とされる血清アルブミン(Alb)値を中心に,死亡例と生存例の検査値の相違,および他の検査値との関連性を検討し,HD患者の生命予後改善について検討した.まずHD患者160例の2005年1年分のAlb値の平均を算出し,これをmean(m)Alb値として前向きCohortを設定し,2年6か月追跡した.追跡期間中に死亡例と生存例とに分け,mAlb値以外にもm血清尿素窒素(BUN)値,m血清リン(P)値,m標準化蛋白異化率(nPCR),年齢などの差異を解析した.さらにmAlb値とmBUN値,mP値,mnPCR,年齢などとの関連性も分析した.死亡例では生存例にくらべてmAlb値は有意に低く(3.5 g/dL vs. 3.8 g/dL,p<0.0001),mBUN値(57.5 mg/dL vs. 67.8 mg/dL,p=0.0002),mP値(4.4 mg/dL vs. 4.9 mg/dL,p=0.0123),m血清カリウム(K)値(4.4 mEq/L vs. 4.8 mEq/L,p=0.0018),mnPCR(0.9 g/kg/day vs. 1.1 g/kg/day,p=0.0011)も死亡例では有意に低かった.また,死亡例では年齢が有意に高く(71.5歳 vs. 60.8歳,p=0.0008),透析歴は長く,糖尿病例が多い傾向がみられたが,性別では差はなかった.その他m血清総蛋白(TP)値,m標準化透析量(Kt/V)では有意差はなく,m血清総コレステロール(TC)値は死亡例の方が低く,mC反応性蛋白(CRP)値は死亡例の方が高い傾向がみられた.さらにmAlb値はmBUN値,mP値,mK値,mTP値,mTC値,mnPCRとは有意な正の相関が,年齢,mCRP値とは有意な負の相関がみられた.また,mAlb値は透析歴,mKt/Vとは相関はなかった.HD患者のmAlb値は生命予後の予知因子として有用である.死亡例ではmAlb値,mBUN値,mP値,mnPCRなどが有意に低かったため,生命予後改善には日頃からの十分なエネルギーとたんぱく質摂取が必要であろう.特に高齢者にはこれらの摂取を励行し,BUN値やP値の悪化は透析量の増大で対処すべきであろう.今後HD患者の高齢化に伴い,食事制限から食事摂取励行への発想の転換が必要である.

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