某企業における出向者の健康状態に関する調査

書誌事項

タイトル別名
  • Investigation of the Health Condition of the "Shukko" Person in a Certain Japanese Company
  • 調査報告 某企業における出向者の健康状態に関する調査
  • チョウサ ホウコク ボウ キギョウ ニ オケル シュッコウシャ ノ ケンコウ ジョウタイ ニ カンスル チョウサ

この論文をさがす

説明

出向という勤務形態が健康に及ぼす影響を検討した.出向は,終身雇用が一般的であった日本において,人員整理の目的で考え出された勤務形態である.出向者は,現在の会社の所属であるが,他の会社の業務に従事する.一般に,出向に伴い,不利益が増すことが多い.対象は,某製造業に勤務する社員483人である.子会社への戦略出向群143人(平均42.2±5.5歳),本社管理職をポスト・オフ後他企業へ出向したポスト・オフ群30人(平均55.6±2.1歳),本社勤務群310人(平均41.8±5.2歳)である.健康診断結果のうち,肥満度,収縮期血圧(SBP),GPT,γ-GTP(GGTP),総コレステロール(Tcho),中性脂肪(TG),空腹時血糖(FBS),尿酸値(UA)と心電図および胃X線撮影の所見に関して,重回帰分析を用いて,比較検討した.ポスト・オフ出向群は,本社勤務群・戦略出向群に比較して,有意に年齢と収縮期血圧が高かった(p<0.0001).年齢に有意差のない本社勤務群と戦略出向群の比較では,本社勤務群のSBP(p<0.001)とFBS(p<0.0001)が有意に高かった.ポスト・オフ出向群において有意に心電図所見の重症度が高かった(p<0.0001).重回帰分析の当てはまりの良い重回帰式は,目的変数SBPに対し,有意な説明変数肥満度,FBS,UA(p<0.0001)のもの.目的変数,FBSに対し有意な説明変数GGTP,SBP,UA,GPT,年齢のものであった(p<0.0001).さらに目的変数,心電図所見に対し有意な説明変数は,勤務形態とSBPであった(p<0.05).以上より,平均年齢の高いポスト・オフ出向群では,高齢者に多い疾患の予防と早期発見が重要と考えられた.本社勤務群では,肥満が問題となり,生活習慣病の予防が重要と考えられた.愁訴の多かった戦略出向群では,明らかな異常所見を認めず,この愁訴は精神的ストレスによるものと推測した.そこで,戦略出向群ではメンタルヘルス対策が重要であることが示唆された.

収録刊行物

  • 産業衛生学雑誌

    産業衛生学雑誌 44 (6), 242-249, 2002

    公益社団法人 日本産業衛生学会

被引用文献 (2)*注記

もっと見る

参考文献 (8)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ