豚の繁殖技術応用の世界的展望 特に人工授精に関連して

  • Johnson Lawrence A.
    Germplasm & Gamete Physiology Laboratory, Agricutural Research Service, U. S. Department of Agriculture Beltsville

書誌事項

タイトル別名
  • Worldwide prospect of reproduction technology application of pig. Concerning artificial fertilization especially.
  • トクベツ コウエン ブタ ノ ハンショク ギジュツ オウヨウ ノ セカイテキ
  • 特に人工授精に関連して

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説明

豚の人工授精の初期の利用が1930年代に始まったことは一般的に知られている。日本は豚人工授精応用の創始国であった。その方法は広く世界的に用いられた。伊藤, 丹羽, 工藤 (Ito, Niwa and Kudo) は千葉市に所在した国立畜産試験場で1938年に研究を開始し, 豚用人工膣を考案して, 精液採取の方法を発展させ, 精液注入器の原型も作った (1948)。これらの初期の研究成果により, 日本の技術は他の多くの国々に広まった。そして現在も世界的に用いられている。丹羽とその共同研究者達 (Niwa and his colleagues, 1955) は豚精液の保存に卵黄クエン酸ソーダ液の利用を報告し, 又一般的に牛精液の保存に用いられた5℃よりも15℃保存を推奨した。Polge ら (1956) は又豚精液用の適当な保存液を用いて保存し, その後利用された。<br>豚の人工授精の利用は引き続き世界的に発展したが, アジアやヨーロッパではそれぞれの国の応用に向く技術が広く普及し, 今日世界の他の地域に比べて人工授精によって繁殖される雌豚の割合が最も高い。<br>アメリカの例では, 過去2年間に非常な成長を示し現在人工授精によって繁殖される雌豚の数は25%に近い。それは3年前の5%以下からの上昇である。<br>今日, 液状精液は雌豚に対する精液配布の優勢な方法として続いている。そして, 人工授精によって繁殖されている雌豚の数は世界で1,200万頭から1,500万頭と推定される。いくつかの精液保存液が用いられている。現在最も多い保存液は Beltsville TS (BTS) で, 3~4日間以上使用可能で世界的に広く利用されている。他の保存液としては Androhep と Modena が6日間まで精液保存が出来ると認められる。それぞれの保存液には特別な利点がある。これらはすべて実際上使用まで大体18℃で保存する。<br>凍結精液は, 主として1つの国又は州から他へ特別な血統を導入するために使われている。1975年商業的規模でそれが開始されて以来, 世界の50ヵ国以上で利用されている。凍結精液での分娩率は50~65%である。これは液状精液や自然交配に比べて子豚生産において不満足である。従って凍結精液の利用には限度がある。<br>新しい繁殖技術の進歩は, 豚の人工授精を広める上にも多くの変化があることを示唆する。将来は非外科的移植技術の発達による胚移植の積極的な活用が有望となるだろう。オランダや日本, 米国での最近の研究は非常に現実性のある技術となっている。<br>ベルッビル精子性支配技術 Beltsville sperm sexing technology を用いて性の選別 (予知) Sex preselection を行えば, 管理の融通性を改善すると同時に大きな育種的利点を得る新しい機会が得られる。その技術とは, XとY豚精子のDNA含量の違いによって精子をフローサイトメトリーに振り分ける技術である (Johnson, 1991)。<br>体外受精も又今後5年以内に商業的生産に用いるところまで近づいている。<br>1930年代に日本においてなされた小規模な人工授精の開始以来, 1990年代の今日の人工授精の利用までに, われわれは, その利用が著しく増加し, 又著しく改良されたことを見ることが出来る。 今後10年以内に世界の雌豚の75%は人工授精によって繁殖されるであろう。又多くの新しい繁殖技術は今後5年以内に適用されることになるだろう。

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参考文献 (25)*注記

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