搾乳牛の肥満と分娩前後における血中脂質成分およびビタミンA濃度の変動

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タイトル別名
  • Changes in Blood Lipid Components and Vitamin A in Obese Dairy Cows in Peripartum
  • サクニュウギュウ ノ ヒマン ト ブンベン ゼンゴ ニ オケル ケッチュウ シ

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説明

搾乳牛の肥満と体内ビタミンAの動態との関連について究明する試験の一環として, 分娩前に肥満の傾向が認められた12頭の牛群を用いて分娩前8週から分娩後13週まで, ビタミンA50,000IUを連日経口投与し, 経時的に血液および牛乳を採取して脂質成分とビタミンA濃度を測定した.<BR>供試牛の分娩前1週の平均体重は805.2kgで, 体重・体高比の平均は545であり, 肥満の傾向が強く認められた.血漿グルコースは分娩前ではプラトーな推移を示し, 分娩当日に一過性の増加を示した後低下し, 4日後に最低値に達し, 以後漸増した.遊離脂肪酸とケトン体は類似した変動を示し, 分娩前はほとんど変動せず, 分娩当日から増加し, 5日目に各々1, 163.2μEq/l, 1, 500.3μM/lの最高値を示した後, 3週目までに急速に減少した.総コレステロールとリン脂質も類似した変動を示し, 分娩前3週から減少し始め, 分娩翌日に最低値を示し, 3週後まで低値が継続した後漸増した.血漿ビタミンAは試験開始時平均で81.9IU/dlあり, 連日50,000IUを投与したにもかかわらず, 分娩前3週から低下し, 分娩後3日目に平均で40.5IU/dlの最低値に達し, 2週目まで同様な低値が継続した後急激に増加した.これら供試牛の分娩後の乳汁中ビタミンA濃度は, 分娩当日の初乳において平均で424.4IU/dlを示し, 初乳期では100IU/dl以上の値を維持し, 分娩後2週目からは44.7から71.2IU/dlの範囲で推移した.<BR>以上の結果から, 分娩前に肥満の牛ほど分娩後に体脂肪の動員が顕著に現われることが明らかとなった. そして, 分娩前から大量のビタミンAを投与していたにもかかわらず, 分娩後に認められた血漿ビタミンAの低値は, 摂取エネルギーの不足に随伴した体脂肪の動員に伴う脂肪肝の発生があったため, 肝臓でのレチノール結合蛋白代謝が阻害され, 血中へのビタミンAの転送が障害された結果であると推察される.

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