人とマカクザルの軋轢解消にむけた統合的アプローチを目指して

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タイトル別名
  • Integrated approaches to resolve human-macaque conflicts in depopulating societies
  • ヒト ト マカクザル ノ アツ轢カイショウ ニ ムケタ トウゴウテキ アプローチ オ メザシテ

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抄録

<p>現在,多くの国で人とマカクザルの軋轢が課題となっている.日本ではニホンザル(Macaca fuscata)が深刻な被害を発生させる主要な害獣の一つとして認識されている地域が多く,効果的な管理を行うための研究や実践が進められている.一方,農村では人口減少や高齢化が進行しており,管理手法の整理や体制の再構築が急がれている.第5回国際野生動物管理学術会議における本シンポジウムでは人口減少・高齢化が進行する日本の社会情勢と,ニホンザル管理の現状を紹介し,今後の課題について議論した.一般的にマカクザルは運動能力や学習能力が高く,被害を防ぐことは容易ではないが,近年,日本では2つのアプローチが有効であることが示されている.一つは,地域が主体となって被害管理を行うアプローチで,地域住民が協力して取り組むことで効果を上げることが示されている.もう一つは,管理すべき対象の群れを識別したうえで,群れ毎に計画的な個体数管理を行うアプローチである.このアプローチでは,群れの個体数や特性についての科学的データを基に,適切な捕獲手法を選択することが求められる.最近では計画的な個体数管理を実施しはじめる自治体もあり,その効果に関するデータも得られている.これらの成果はマカクザルの管理に新しい知見をもたらすことが期待される.今後,これらのアプローチを組み合わせた統合的な管理手法について議論するとともに,長期的にニホンザルの個体群を維持していくために,管理計画の中に保全をどう位置付けるかについて検討しなければならない.</p>

収録刊行物

  • 哺乳類科学

    哺乳類科学 56 (2), 241-249, 2016

    日本哺乳類学会

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