鼻性眼窩・頭蓋内合併症の一症例

  • 成尾 一彦
    奈良県立医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科学教室
  • 細井 裕司
    奈良県立医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科学教室
  • 高瀬 彩子
    近畿大学医学部奈良病院耳鼻咽喉・頭頸部外科

書誌事項

タイトル別名
  • A Case of Intraorbital and Intracranial Rhinogenic Complications

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抄録

前頭洞炎から波及した硬膜下膿瘍と静脈洞血栓症が生じた鼻内頭蓋内合併症の一例を経験した。症例は, 22歳男性で左眼瞼腫脹, 右片麻痺, 意識障害があり当院へ紹介となり, CTならびにMRIで副鼻腔炎を伴う硬膜下膿瘍ならびに静脈洞血栓症の診断をえた。高度救命救急センターの集中治療室に入院となり, 広域スペクトラムの抗菌薬が投与され全身麻酔下に内視鏡下鼻副鼻腔手術が施行された。術後6時間後, 脳ヘルニアにより瞳孔散大と対光反射消失が生じた。脳保護のため低体温療法とバルビツレート療法が開始され, 浸透圧利尿薬ならびに抗凝固剤のヘパリン療も投与された。その後MRIで複数の硬膜下膿瘍を認め脳神経外科医により開頭ドレナージが施行された。術後経過は良好で, 左動眼神経麻痺以外は後遺症なく退院となった。<br>2000年以降本邦で報告された頭蓋内合併症 (本症例を含む) 34症例を検討した。男性26例, 女性8例, 年齢は10歳から68歳で平均23.4歳であった。原因となる副鼻腔は, 前頭洞24例, 篩骨洞4例, 蝶形骨3例, 上顎洞1例, 不詳2例であった。頭蓋内合併症の内訳 (重複含む) は硬膜下膿瘍21例, 化膿性髄膜炎19例, 脳膿瘍6例, 静脈洞血栓症 (本症例) 1例であった。副鼻腔手術は27例に, 脳外科でのドレナージが24例に施行され, 全体の死亡率は8.8%であった。

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参考文献 (7)*注記

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