特発性食道破裂の治療成績と治療戦略

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  • Clinical Study on the Treatment Outcome and Strategy for Spontaneous Esophageal Rupture

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抄録

教室において経験した特発性食道破裂34例を対象として診断および治療成績と治療戦略について検討した。全例が嘔吐後の発症で主訴は胸背部痛が多かった。初診時正診率は55.9%であり,発症後診断までの時間は中央値で11(4-168)時間であった。穿孔形式は胸腔内穿破型22例,縦隔内限局型12例であった。穿孔部位は下部食道左壁が29例(85.3%)を占めた。食道外膜側の穿孔長径は中央値で3(1-8)cmを示し,胸腔内穿破型で有意に長かった。治療方法は縦隔内限局型では12例中6例に保存的治療を選択し,6例に手術を選択した。胸腔内穿破型では22例中21例に手術を選択し,急性期を過ぎた患者1例に保存的治療を行った。手術は開胸操作による層々二層縫合閉鎖のみを施行した患者が10例,層々二層縫合閉鎖に胃底部縫着術を付加した患者が15例,食道切除し頸部食道瘻を初回に行い,二期的に修復した患者が2例であった。縦隔内限局型は保存例,手術例ともに全症例が経過良好であった。胸腔内穿破型で手術例に縫合不全,膿胸などの合併症が9例(33.3%)発生し,術後在院死亡は1例(3.7%)認めた。胸腔ドレーンは通常留置される胸部背側に加え,胸部下行大動脈左側と左横隔膜上背側に留置した。術後膿胸と縦隔膿瘍に対する予防処置として有効なドレナージ法とわれわれは考える。特発性食道破裂患者に対し,適切に早期診断を行い,適切な治療選択を行うことで治療成績は向上すると考えられる。

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