エホバの証人の輸血拒否をめぐる問題点  代行判断者を立てるべきか否かを決定するための患者の判断能力の有無の判定基準たる判断能力の概念について

  • 粟屋 剛
    岡山大学大学院医歯薬学総合研究科法医生命倫理学講座生命倫理学分野

書誌事項

タイトル別名
  • The Concept of Competence as a Criterion to Assess the Patient's Ability to Determine Whether or Not to Designate a Representative Decision-Maker

この論文をさがす

抄録

  医療行為の承諾の場面では, 患者の判断能力が要求される. 患者に判断能力があれば承諾は有効となり, なければ無効となる. そして後者の場合, 代行判断者を立てる必要が出てくる. この代行判断者を立てるべきか否かを決定するための患者の判断能力の有無の判定基準たる判断能力の概念は, 通常, 「自己の身体に対してなされる医療行為の内容・性質, 利益・不利益などを理解し, それに基づいてその医療行為を承諾するか否かを判断する能力」 などと理解されている. しかし, このように, 当該の具体的医療行為を基準にして判断能力の概念が定立されるならば, なされようとしている当該医療行為が高度な判断を要するものである場合, 通常程度の社会的な判断力を有する成人患者であってもそのような高度の判断能力を有していなければ 「判断能力なし」 , したがって 「承諾は無効」 , とされてしまう. こうした場合, 患者は通常は, 医師を信頼して, あるいは, いわゆるセカンド・オピニオンを求めたうえで当該医療行為を承諾するであろうが, そのような承諾を無効とはいえないであろう.<br>  このような矛盾を避けるために, そうした判断能力の概念は一般的, 抽象的な意味での 「医療行為」 の概念を基準にして定立されるべきである. すなわち, そのような判断能力とは, 「一般的, 抽象的な意味での医療行為の概念を理解し, 判断する能力」 である.

収録刊行物

被引用文献 (3)*注記

もっと見る

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ