膵臓病理組織切片を用いた、ガン組織中のアミノ酸プロファイル分析法の開発

  • 岡本 千聖
    味の素株式会社 イノベーション研究所 基盤技術研究所先端分析研究グループ
  • 吉田 寛郎
    味の素株式会社 イノベーション研究所 基盤技術研究所先端分析研究グループ
  • 中山 聡
    味の素株式会社 イノベーション研究所 基盤技術研究所先端分析研究グループ
  • 菊池 信矢
    味の素株式会社 イノベーション研究所 基盤技術研究所先端分析研究グループ
  • 小野 信和
    味の素株式会社 イノベーション研究所 基盤技術研究所先端分析研究グループ
  • 宮野 博
    味の素株式会社 イノベーション研究所 基盤技術研究所先端分析研究グループ
  • 水越 利巳
    味の素株式会社 イノベーション研究所 基盤技術研究所先端分析研究グループ
  • 平岡 伸介
    国立がん研究センター中央病院 分子病理分野
  • 猪野 義典
    国立がん研究センター中央病院 分子病理分野

書誌事項

タイトル別名
  • Development of Analytical Method for Amino Acids Profile in Cancer Tissue Using Human Pancreas Pathological Sections

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説明

【背景・目的】膵臓がんは初期症状がほとんどなく、早期発見が困難な疾患である。発見時には、手術 適用外の症例が多く、また手術で切除をしても再発率が高いことから、早期発見方法が求められている。 当社では、アミノインデックス® がんリスクスクリーニングの事業を展開しており、2015 年4 月に膵臓 がんを上市した。膵臓がんを発症すると、血漿中のアミノ酸濃度が変動するが、メカニズムは解明され ていない。共同研究先の国立がん研究センターでは、膵臓がん患者の血液試料に加え、組織の病理切片 も採取している。我々は、血液と組織の情報を統合することで、アミノ酸濃度が変動するメカニズムの 解明に繋げることができると考え、病理切片中に含まれる微量なアミノ酸の高感度かつ高精度な分析法 を開発することとした。<br> 【方法】本研究では、ヒトの膵臓組織病理切片の前処理、分析条件を検討し、35 種類のアミノ酸の測定 条件を最適化した。この条件を用いてLC-MS/MS で膵臓組織病理切片中のアミノ酸を定量した。 <前処理>O.C.T.Compound で包埋した1.0 cm3 の凍結病理組織ブロックを用いて厚さ6μm の切片を 作成し、10 枚分を分析に使用した。回収率補正用の安定同位体を添加したメタノール溶液を膵臓組織 切片に添加し、凍結状態のまま酵素を失活させ、ホモジネートを行った。その後、クロロホルムで脱脂 処理、濃縮乾固を行い、濃縮液に、上記と異なる25 種類の安定同位体を添加し、誘導体化を行った。 <分析>分析カラムにはL-column ODS(50×2.1 mm i.d., 粒径3μm)を用い、移動相には0.2% 酢酸水、 アセトニトリルを使用し、グラジエント溶出させ、LC-MS/MS で検出した。<br> 【結果・考察】膵臓は消化酵素が多い臓器であり、アミノ酸を安定して測定するには、凍結状態での処理、 安定同位体の使用などの工夫が必要であった。組織切片の破砕から脱脂処理までの回収率補正に1 種、 誘導体化から測定までの補正のために25 種の安定同位体を用いたことで、高い再現性を得た(日内精 度1.8%-10.9%)。分析においては、移動相を酸性にし、誘導体化法を利用したことで、選択性が向上し、 高感度化にも成功した。今回確立した手法では、約6mg という微量の膵臓組織切片から27 種類のアミ ノ酸を高感度かつ高精度に検出することに成功し、この方法を用いて、健常人と癌患者の組織切片中の アミノ酸濃度を分析したところ、アミノ酸プロファイルに違いを見出すことができた。

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