周術期膠質輸液としての第3 世代HES

書誌事項

タイトル別名
  • Third Generation HES as a Perioperative Colloid Infusion

この論文をさがす

抄録

 ERASガイドラインに「Intraoperative fluids should be balanced to avoid both hypo- and hypervolemia. Intraoperative goal directed fluid therapy should be considered on an individual basis」というのがある。術中輸液管理はハイポボレミアやハイパーボレミアを避けてバランスをとることが望ましい、そのために個人に見合った目標指向型輸液管理を考慮せよということである。手術による出血はハイポボレミアを招く最大の要因である。麻酔による血管拡張は静脈還流を低下させる。外科的出血を絶対的なハイポボレミア、麻酔によるものを相対的なハイポボレミアと呼ぶが、双方とも静脈還流の低下から心拍出量の低下を招く。それに対する処置を細胞外液で行うと大量に輸液が必要であるだけでなく、間質浮腫を起こし、術後合併症の原因となりやすい。一方、膠質液は血管内に止まるため、少量で効果的にハイポボレミアを補充できる。同時に開きすぎた静脈系のリザーバーを収縮させる血管収縮薬の併用も効果的である。<br> アルブミン製剤は膠質浸透圧を維持するのに、特に食道癌や肝臓癌などの大手術時に使われてきた。また、大量出血時の血管内volume expander としても使われてきた。アルブミン製剤は術後の低アルブミン血症の対症療法としても使われているが有効性のエビデンスは乏しい。第3 世代HES ボルベンはアルブミンの代替膠質液として十分なエビデンスもあり、また、アルブミンを凌ぐ性質も持っている。HES は血管内容量を保つため、希釈による術後のアルブミン値の低下は著明であるが、膠質浸透圧の低下は少ない。第3 世代HES ボルベンは第2 世代HES サリンヘス・ヘスパンダーと比べて止血凝固系への影響も少なく、使用可能量も50mL/kg/ 日と大幅に増えた。そのため、手術中のみならず、術後のハイポボレミアにも有効である。近年HES の腎障害に対して、欧州を中心に世界的な逆風が吹いた。そのエビデンスとなるRCT を詳細に検討すると第3 世代HES ボルベンに関して、死亡率、腎機能に否定的なものは一つもない。第3 世代HES は術中、術後の膠質液として、今後の周術期医療を大きく変えるポテンシャルを持った輸液である。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ