傷害心のカルシウム動態異常とギャップ結合の変化

  • 田中 秀央
    京都府立医科大学大学院医学研究科細胞分子機能病理学
  • 小山田 正人
    京都府立医科大学大学院医学研究科細胞分子機能病理学
  • 辻井 英治
    京都府立医科大学大学院医学研究科細胞分子機能病理学
  • 万井 弘基
    京都府立医科大学大学院医学研究科細胞分子機能病理学
  • 中上 拓男
    京都府立医科大学大学院医学研究科細胞分子機能病理学
  • 藤原 克次
    京都府立医科大学大学院医学研究科細胞分子機能病理学
  • 高松 哲郎
    京都府立医科大学大学院医学研究科細胞分子機能病理学

書誌事項

タイトル別名
  • <I>Changes in the intracellular Ca<SUP>2+</SUP>dynamics and gap junctional communication in injured hearts</I>

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説明

ギャップ結合 (gap junction: GJ) は, 心臓の協調的な興奮収縮を担う細胞間チャネルである.近年, 梗塞心や肥大心などの病的心において, GJの構成蛋白であるコネキシン43 (connexin43: Cx43) の発現異常が見出され, その不整脈源性が示唆されている.しかし実際に機能している心臓において, GJの異常に伴い心筋細胞間の機能的連結がどのように変化し不整脈を引き起こすかは不明である.われわれは, 傷害心筋におけるCa2+動態異常が, GJの機能変化と相まって, 細胞間の協調的な興奮・伝導を損なうとの観点にたち, ランゲンドルフ灌流ラット心における心筋細胞のCa2+動態を高速共焦点レーザ顕微鏡で解析した, 健常な心臓では, 興奮により個々の心筋が均一なCa2+transient (CaT) を示すのに対し, Ca2+過負荷に陥った傷害心では, 撃発活動につながる自発性のCa2+の細胞内伝播 (Ca2+波) が生じた.さらに高度の傷害心筋では, 心筋間で同期するCaTが失われ, 高頻度のCa2+波が生じた.CaTを伴わない非同期性のCa2+波は, 冠動脈結紮2時間後の梗塞巣辺縁の心筋にも認められ, これらの心筋ではCx43の発現が低下していた.一方, 梗塞巣近傍の虚血心筋では, Cx43の発現は保たれていたが, CaTやCa2+波が混在する不均一なCa2+動態が観察された, 以上より, 傷害心ではCa2+動態が不均一化し, これがGJ機能の低下と相まって興奮・伝導障害につながる病理基盤を形成するものと考えられる.

収録刊行物

  • 心電図

    心電図 27 (3), 230-236, 2007

    一般社団法人 日本不整脈心電学会

参考文献 (29)*注記

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