競争結果の呈示と事象関連電位について

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  • Processing of results in competitive situation : An event-related potential study

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抄録

競争において,よりよいパフォーマンスを発揮するためには,結果に対する認知は重要である.競争場面には,スポーツのように競い合う相手と空間を共有している場合もあるが,オンライン化されたテレビゲームのように相手から隔離されている場合もある.同じ課題を用いた競争でも,環境が異なれば,その時の情報処理過程も異なってくることが予想される.一方,事象関連電位(ERP)の中で,P300はその振幅が注意配分の指標となり,潜時が評価時間に相当するとされ,N400は意味処理に関連する成分として,それぞれ多くの認知研究に利用されている.そこで本研究では,反応時間課題を用いて競争場面を設定しERPを記録した.30名の被験者は,競争相手の姿が見える群と見えない群との2群にランダムに割り当てられた.その結果,両群ともに結果の呈示後にP300と見られる大きな陽性成分が観察された.両群とも,勝った時は負けた時に比べP300の振幅が大きく,頂点潜時は負けた時の方が延長していた.競争に勝つことへの動機づけによって高められた注意や,負けた時は次の試行へのフィードバック情報が付加されることを反映したものと考えられる.N400 は,見える群では負けた時に比べ勝った時により明瞭に出現し,見えない群では勝った時と負けた時の形状が類似していた.これらの現象は,見える群は競争時の相手に関する様々な情報に基づいて結果に応じた情報処理を行っており,見えない群は限られた情報であるため勝っても負けても同様の処理過程を行っていることを反映したものと考えられる.以上の結果から,競争時には勝つことに動機づけられ,負けた時には次の競争への構えが形成されていること,競争時に相手と空間を共有するか否かは異なる情報処理過程をもたらすことが示唆された.

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