成熟婦人における増殖期子宮内膜の細胞学的検討

書誌事項

タイトル別名
  • CYTOLOGICAL STUDY OF THE PROLIFERATIVE PHASE ENDOMETRIUM IN NORMAL FEMALES
  • 成熟婦人における増殖期子宮内膜の細胞学的検討--分岐腺管出現の意義
  • セイジュク フジン ニ オケル ゾウショクキ シキュウ ナイ マク ノ サイボウガクテキ ケントウ ブンキセンカン シュツゲン ノ イギ
  • —Significance of Branching Glands—
  • ―分岐腺管出現の意義―

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抄録

子宮内膜細胞診による日付診の報告は現在までごくわずかに過ぎない.今回われわれは, 細胞学的に成熟婦人の性周期のなかで, とくに増殖期内膜に注目した検討を行ない, 従来の報告にある細胞像を検証し, また, 新たな知見を得たので報告する.子宮内膜細胞診で数回にわたり陰性と判定され, 臨床的に月経不順, 不正性器出血, 子宮筋腫および腺筋症などの疾患のあるものを除外した152例の子宮内膜細胞診材料を対象とした.月経開始後4~14日目にあたる期間の材料を用い, サイトブラシにより細胞を採取した.これらの条件のもと細胞学的に1) 腺管の構造, 2) 内膜腺細胞の核面積および円形率, 3) 子宮内膜間質細胞の核面積および円形率, 4) 毛細血管の形状について検討した.また, 一般的な内膜腺の形状から逸脱した分岐管状構造を示す集団が認められた場合も, 同様の検討を行なった.さらに子宮筋腫の摘出標本材料で増殖期に相当する内膜組織8例を用いて3次元的に内膜腺の構造を観察した.これらの結果, 増殖期内膜の細胞像は, 従来の報告にほぼ一致した単一管状構造を主体とする内膜腺管が認められた.さらに全体の14.5%には分岐腺管が観察され, これらは2分岐 (95.4%) あるいは, 3分岐 (4.6%) を呈していた.分岐腺管は標本内に最大8, 最小1, 平均3.0の集団が観察された.腺管径は最大133.57μm, 最小44.32μm, 平均86.01±23.67μm.増殖期初期では25.6%, 増殖期中後期では10.3%の頻度で出現していた.分岐腺管/正常内膜腺管比は, 増殖期初期, 中後期において出現率に偏りはなく平均2.9%を示しており, 分岐腺管は増殖期のきわめて初期の段階から存在することが示唆された.また, 組織立体構築の結果からも分岐腺管は25.0%の頻度で出現していた.今回のわれわれの検討から, 増殖期内膜の全体像が明らかとなった.また, 増殖性病変のひとつに挙げられてきた分岐腺管の出現は, 正常増殖期内膜においても同様に観察されることが確認された.さらに組織立体構築像の併用により, これまで組織学的に把握できなかった分岐腺管の存在についても判明した.したがってこれからの細胞診断には, 成熟婦人の増殖期内膜においても分岐腺管が出現することに対する認識が必要であり, これらの細胞形態を十分理解することが重要と考えられた.

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