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- 北村 昌三
- 昭和大学歯学部第一口腔解剖学教室
書誌事項
- タイトル別名
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- Three Dimensional Ultrastructures of the Osteocytes and the Walls of Osteocyte Lacunae in Immature Bone
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説明
成長過程のラットの幼若骨の骨細胞を塩酸・コラゲナーゼ法と, 低濃度四酸化オスミウム溶液で細胞内小器官を露出させるODO法とによって処理して, 骨細胞の表面形態と細胞内立体超微形態を, トリプシン・ピアルロニダーゼの混合液の酵素処理によって骨小腔壁の未石灰化層の立体超微形態を, 透過電子顕微鏡像と対比して, 高分解能の走査電子顕微鏡で観察した.幼若骨の骨細胞は骨芽細胞よりも小型で卵円形を呈しており, 骨細胞体全周からの放射状の細胞質突起によって複雑なintercellular networkが形成されていた.幼若骨の骨細胞は骨芽細胞と同様に, 発達したゴルジ装置, 多量の粗面小胞体, 滑面小胞体および中等度量のミトコンドリアなどのタンパク合成に関与する細胞内小器官を備えていた.ゴルジ装置はゴルジ層板とゴルジ層板の外側端が拡張した空胞や小胞で構成されていた.透過電子顕微鏡像では, ゴルジ層板の空胞化した部分と, 周囲の空胞にはフィラメント様構造物や, 中等度の電子密度の均質構造物が観察された.ゴルジ装置は延長したゴルジ層板や, 滑面小胞体と考えられる管状の桿状構造物を介して相互に連絡されているとともに, 粗面小胞体の網状構造を形成した領域とも部分的に連絡していた.粗面小胞体は細胞辺縁の層板からなる領域と, ゴルジ領域の周囲の網状構造を呈した領域とで構成されていた.また, ゴルジ装置, 粗面小胞体および滑面小胞体などの膜面には, 小胞の形成を示唆する出芽が認められた.ゴルジ領域の膜性構造物や, 粗面および滑面小胞体の相互の連絡は, タンパク合成細胞としての物質輸送経路を意味していると考えられる.一方, 骨小腔の細胞周囲域には, 網状ないし部分的に束状のコラーゲン細線維からなる未石灰化層が形成されていた.すなわち, タソパク合成に関与する豊富な細胞内小器官を有した骨細胞は, 骨小腔の内壁に比較的多量のコラーゲン細線維を分泌していると考えられる.
収録刊行物
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- The Journal of Showa University Dental Society
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The Journal of Showa University Dental Society 7 (1), 87-103, 1987
昭和大学・昭和歯学会