気分変調性障害 (いわゆる抑うつ神経症) の臨床統計的研究

書誌事項

タイトル別名
  • STATISTICAL STUDY OF DYSTHYMIC DISORDER (SO-CALLED NEUROTIC DEPRESSION) IN CLINICAL PRACTICE

この論文をさがす

説明

1979年1月から1984年12月までの6年間に昭和大学病院神経科精神科外来を初診したDSM-IIIの気分変調性障害に該当する47例を対象とした.これと同一範疇の感情障害の中心に位置づけられる大うつ病に該当する115例を対照に初発年齢と平均年齢および人格特徴, 性別による初発年齢分布との関係, 発病の誘因, DRS-S78 (昭和大学式うつ状態評価尺度1987年度版) による精神症状の推移, 転帰, 治療期間, 遺伝負因について臨床統計学的に比較検討を加え, 気分変調性障害の特徴を浮き彫りにし, 多軸診断を追加あるいは修正することで, より明確な診断基準を作成する為本研究に着手し, 次のような結果を得た. (1) 50歳以上の初発はなく, 初発の平均年齢は大うつ病に比較して有意に低く, 初発年齢のピークは女性では20歳代に, 男性では40歳代にあった.一方, 大うつ病では加齢とともに初発症例は増加傾向を示し, そのピークは男性では50歳未満に, 女性では50歳以上にあった. (2) 人格特徴は自己中心的, 依存的, 過敏という未成熟な神経症的人格傾向で, 大うつ病の人格傾向とは明瞭に異なっていたが, 40歳代初発症例では内向的, 強迫的という大うつ病に親和性のある人格傾向が認められた. (3) 誘因が認められる症例は, 大うつ病に比較して有意に多く, その内容は, 葛藤が有意に多くを占めていた.とくに女性では, 家庭内葛藤が多かった. (4) DRS-S78の総得点は, 大うつ病に比較して, 初診時では有意に低く, 第1週目までは有意に減少したが, 以後は有意な変動を示さなかった.一方, 大うつ病は第3週後まで有意に減少した. (5) 症状の改善をみた症例数は, 大うつ病に比較して有意に少なかった.また, 改善に要した期間は有意に長く, 躁転した症例はなかった. (6) 遺伝負因は, 大うつ病に比較して有意に少なかった. (7) 青年期・初期成人期の未成熟な神経症的人格傾向をもつ女性が葛藤を誘因として発症する抑うつと, 中年の男性に多く認められる大うつ病に親和性のある抑うつの2つの類型が存在した.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ