急性冠症候群発症時の冠動脈血栓におけるTissue FactorとPlasminogen Activator Inhibitor-1の発現についての病理組織学的検討

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タイトル別名
  • HISTOPATHOLOGIC INVESTIGATION OF THE EXPRESSION OF TISSUE FACTOR AND PLASMINOGEN ACTIVATOR INHIBITOR-1 IN CORONARY THROMBI AT THE ONSET OF ACUTE CORONARY SYNDROME
  • キュウセイカン ショウコウグン ハッショウジ ノ カンドウミャク ケッセン ニ オケル Tissue Factor ト Plasminogen Activator Inhibitor 1 ノ ハツゲン ニ ツイテ ノ ビョウリ ソシキガクテキ ケントウ

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抄録

急性冠症候群 (ACS) 発症時の血栓形成およびその成長にはtissue factor (TF) やプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1 (PAI-1) が関与していることが知られている.近年, 緊急冠動脈造影時の血栓吸引療法により, ACS発症時の血栓及び粥腫の組織学的検索が可能となった.我々はACS発症時の緊急冠動脈造影検査時に吸引された検体を用いて血栓の病理組織学的な検討を行い, TFやPAI-1の発現形態について検討した.症例は178例.男性147, 女性31例, 平均年齢65.6歳採取後の検体にヘマトキシリンーエオシン等の通常染色を施行し, 画像解析装置を使用し血栓総面積, 赤色血栓 (赤血球とフィブリン) , 白色血栓 (血小板とフィブリン) 領域と, 同時に吸引された粥腫部位の面積を測定した.さらにTF, PAI-1に対する抗体を用いて免疫染色を施行し, 各陽性細胞数と血栓の面積との相関を検討した.またマクロファージに発現するCD68, 活性化好中球に発現するミエロペルオキシダーゼに対する抗体を用いて免疫染色を施行した.赤色・白色血栓から成る混合血栓は178例全てに観察され, 粥腫は82例に認められた.検体の面積が10mm2以上の大きな血栓では, 赤色/白色血栓面積の比は血栓全体の面積と有意な相関 (R=0.59, P<0.01) を示しており, 血栓の成長には赤色血栓の増殖が大きく関与していると考えられた.免疫染色では粥腫内にTFが主に泡沫細胞などのマクロファージに発現していた.一方血栓内では粥腫より離れた, 赤色・白色血栓の境界部付近に白血球が多く認められ, 同部位にミエロペルオキシダーゼ, CD68陽性細胞とともにTF, PAI-1陽性細胞が多く認められた.さらに, 赤色・白色血栓境界部付近のTF, PAI-1陽性細胞率と血栓総面積には有意な相関が認められた.血栓の成長には主に赤色血栓の増殖が関連しており, 粥腫より離れた血栓内に認められる白血球に発現しているTFやPAI-1が, この血栓の成長過程に関与していることが示唆された.

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