がんとマイクロRNA~がんの病理診断及び治療マーカーとなりえるか?~

  • 伊藤 浩史
    山口大学大学院医学系研究科分子病理学分野(病理学第二)

書誌事項

タイトル別名
  • Cancer and MicroRNA as a Diagnostic and Therapeutic Marker
  • ガン ト マイクロ RNA ガン ノ ビョウリ シンダン オヨビ チリョウ マーカー ト ナリエルカ

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説明

マイクロRNA(miRNA)は約22塩基の非常に小さいnon-coding RNAで,転写後翻訳レベルでの遺伝子発現制御を担っており,多くの腫瘍においてその発現量の変化が報告されている.我々は,口腔癌および食道癌などの主要な組織型である扁平上皮癌におけるmiRNA発現をマイクロアレイを用いて検討し,外科手術材料ホルマリン固定パラフィンブロック標本を用いて検定,miR-205が扁平上皮のマーカーとして極めて有力であること,miR-21は腺癌と同様に扁平上皮癌でも正常に比べて有意に発現が亢進していることを明らかにし,miR-205とmiR-21の発現量を検討することで扁平上皮癌の分子病理診断が可能であることを報告した.さらに頭頸部扁平上皮癌の有力な予後関連因子である肝細胞増殖因子(HGF)に着目し,培養細胞系を用いてHGF刺激前後でのmiRNAの発現変化を検討し,HGFの機能発現に関わるmiRNAの同定を試みた.その結果Epithelial mesenchymal transition(EMT)等,がんの浸潤転移に関わる機能遺伝子の発現を調節しているmiRNA(miR-200cおよびmiR-27b)を同定し,これらの機能を阻害することで頭頸部癌の進展を阻害できる可能性を示唆した.また,前立腺癌における各Gleason分類で発現するmiRNAについても検討し,前立腺癌におけるmiRNAの発現量は個々のGleason pattern(GP)ではなく,全体としての悪性度,つまりGleason score(GS)によって変化していること,特にmiRNA-182の発現量は高リスクの癌に対して有用なマーカーとなり得ることを明らかにした.本稿ではこれら我々の研究成果を中心に,これまでに分かっているがんとmiRNAの関連性,特に診断,予後,治療マーカーとしての可能性について概説する.

収録刊行物

  • 山口医学

    山口医学 62 (4), 191-197, 2013

    山口大学医学会

参考文献 (35)*注記

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