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- 永井 隆士
- 昭和大学医学部整形外科学教室
書誌事項
- タイトル別名
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- THE EFFECT OF CALCITONIN (ELCATONIN) ON BLOOD FLOW
- カルシトニン セイザイ エルカトニン ノ ケツリュウ カイゼン サヨウ
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説明
カルシトニン製剤には, 鎮痛作用と破骨細胞活性抑制作用がある.鎮痛作用機序は, セロトニンによる下行性の疼痛抑制作用と考えられているが, 我々はそれ以外にも皮膚温増加作用による疼痛抑制作用の可能性を報告した.皮膚温増加作用に, 血流増加作用が関与している可能性が示唆されたため報告する.2004年4月から3年間において, 骨粗霧症による腰背部痛や圧迫骨折にて入院治療中で, カルシトニン製剤の投与予定の患者のうち, 下肢の血流測定に同意の得られた28例に対して検査を行った.カルシトニン製剤であるエルカトニンの投与前と, 投与6時間後の下腿の血流測定を行った.薬剤投与方法は, エルカトニンS20単位 (1cc) を週1回肩に筋肉注射した.馴化時間は15分間とし, 馴化時間終了後2分間の平均値を測定した.血流測定は, 下腿前面中央部の組織血流量 (flow) と血液量 (mass) をアドバンス社製ALF21で測定した.ボランティアの健常成人女性8例に, 生理的食塩水 (生食) 1ccを筋肉注射し検査を行った.エルカトニン投与群28例の内訳は男性6例, 女性22例.骨粗爆症の原因は, 原発性22例, 腎性 (透析性) 4例, ステロイド性2例, 年齢はエルカトニン群67.29±15.39歳生食群33.38±7.76歳であった.エルカトニン投与前後の組織血流量は, 投与前3.80±1.70ml/min100g (以下単位略) , 投与後6.01±4.10 (P<0.05) , 血液量は投与前342.70±159.30, 投与後436.61±214.30 (P<0.05) と, 組織血流量と血液量ともに有意差を認めた.エルカトニン投与前の組織血流量と血液量の数値をそれぞれ小さい順に並べ直し, 前半14例を低値群, 後半14例を高値群と2群に分けて検討したところ, 組織血流量の測定値は, 低値群投与前2.56±0.61, 投与後6.80±5.44 (P<0.01) , 高値群の投与前5.04±1.53, 投与後5.22±2.02 (P=0.75, NS) .血液量では低値群投与前224.18±51.55, 投与後421.14±268.35 (P<0.05) , 高値群投与前461.22±140.69, 投与後452.09±151.16 (P=0.82, NS) であった.エルカトニンを投与すると, 血流の流れの少ないところでは流れを多くし, 血流の流れの多いところでは現状を維持する, という結果になった.一部の症例で血流増加が期待できることを考えると, 血流低下による酸素不足の状態で発生するNO (一酸化窒素) やセロトニンの複合作用によって血管が拡張している可能性などが考えられる.エルカトニンを投与すると, 局所の血流が増加することより, 血流障害から生じる動脈硬化症, 脊柱管狭窄症, レイノー症状などの治療に臨床効果が期待できる.
収録刊行物
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- 昭和医学会雑誌
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昭和医学会雑誌 67 (6), 469-478, 2007
昭和大学学士会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001204834984320
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- NII論文ID
- 130001820402
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- NII書誌ID
- AN00117027
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- ISSN
- 21850976
- 00374342
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- NDL書誌ID
- 9521263
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- データソース種別
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- JaLC
- NDLサーチ
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可