クローン病患者のPeyer板リンパ球と末梢血リンパ球の細胞表面抗原の比較

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タイトル別名
  • COMPARISON OF THE SURFACE ANTIGENS OF LYMPHOCYTES IN PEYER'S PATCHES AND IN THE PERIPHERAL BLOOD OF PATIENTS WITH OR WITHOUT CROHN'S DISEASE
  • クローンビョウ カンジャ ノ Peyerバン リンパキュウ ト マッショウケツ リンパキュウ ノ サイボウ ヒョウメン コウゲン ノ ヒカク

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抄録

Peyer板は経口トレランスの誘導に重要であることが従来の動物実験から明らかにされているが, ヒトPeyer板については検討されていないのが現状である.一方, クローン病の治療に抗原性のない成分栄養剤が有効であること, 病初期にPeyer板が破壊されることが多いことなどより, クローン病の発症や再燃にはこの経口トレランスの破綻の関与が示唆されている.筆者は, 活動期クローン病患者と食餌蛋白全般に対して経口トレランスをすでに獲得している健常者のPeyer板のリンパ球を免疫学的に解析し, 末梢血液中のリンパ球と比較することにより, 活動期クローン病患者のPeyer板リンパ球における経口抗原に対する免疫応答の異常を検討した.対象は, 健常成人6例および活動期クローン病患者6例である.これらの対象から内視鏡的生検法にて回腸末端部のPeyer板を採取し, リンパ球を分離した.これを同一患者の末梢血液リンパ球と共に, 抗CCR4, CCR5 (それぞれTh2, Th1型T細胞表面に選択的に発現されるCCケモカイン・レセプター) , CD4およびCD8モノクローナル抗体で染色し, フローサイトメトリーで解析した.結果, 健常者において, Peyer板リンパ球と末梢血液リンパ球に有意差を認めなかった.しかし, Peyer板リンパ球と末梢血液リンパ球のCD8陽性細胞ではCCR5陽性細胞がCCR4陽性細胞に比し, 有意に多く認められた (p<0.05, p<0.05) .一方, クローン病患者において, Peyer板リンパ球のTh1 (CCR5陽性CD4陽性) およびTc1 (CCR5陽性CD8陽性) はともに末梢血液リンパ球と比較して有意に増加していた (p<0.01, p<0.01) .以上より, クローン病の病態とは, Peyer板において正常な経口トレランスのバランスが損なわれ, ある食餌抗原に対しTh1優位に過剰な免疫応答が惹起され, 活性化されたリンパ球がホーミングを経て局所の腸管粘膜に集積し, 腸管病変を発症することと考えられた.

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