虚血再灌流障害皮弁モデルにおける抗LECAM-1抗体の有用性に関する研究

書誌事項

タイトル別名
  • REDUCTION OF ISCHEMIA-REPERFUSION INJURY TO SKIN FLAPS BY MONOCLONAL ANTIBODY TO LEUKOCYTE ENDOTHELIAL ADHESION MOLECULE-1
  • キョケツ サイカンリュウ ショウガイ ヒベン モデル ニ オケル コウLECAM 1 コウタイ ノ ユウヨウセイ ニ カンスル ケンキュウ

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説明

近年種々の接着分子が発見・報告され, 炎症反応の進展には, 活性化された白血球の血管内皮細胞への接着が, 重要な役割を演じていることが示唆されている.さらに, 接着分子が皮弁の生着壊死に関与することが指摘されている.その中で, Leukocyte endothelial adhesion molecule-1 (以下LECAM-1) はセレクチンファミリーの1つで, リンパ球のホーミング現象に関与し, 白血球と血管内皮細胞との接着の第一段階であるローリング現象への関与も指摘されている.そのため, 様々な炎症反応にも重要な働きをしていることが, 明らかになっている.今回, 皮弁の生着・壊死のメカニズムの解明のために, ラット鼠径皮弁の虚血再灌流障害実験モデルに, LECAM-1に対する抗LECAM-1抗体を用いて, 炎症反応の軽減の有無について実験的に検討を行った.実験には, SD雄性ラット (225-250g) 25匹を使用した.右鼠径部に45×30mmの浅腹壁動静脈を茎とする有茎皮弁をデザイン作成した.9時間虚血で, クランプ解除15分前に尾静脈より抗体 (0.20mg/kg) を投与した治療群 (n=10) と同条件で生食投与の対照群 (n=10) とに分け, 7日間経過観察を行った.同様に皮弁を挙上し, 5分間クランプを行ったものをシャム群 (n=5) とした.実験終了後, 皮弁部は, 肉眼的観察および組織学的解析にて評価した.肉眼的所見の比較では, 治療群で皮弁の生着が良好であるのに対し, 対照群で肉眼的壊死が観察された.皮弁生着面積率の比較では, 9時間虚血抗体投与群で, 89.9+/-24.7%で, 対照群の18.3+/-19.6%に比べ有意に, (p<0.005) 生着率の向上が認められた.組織学的検索では, 治療群で, 炎症細胞浸潤や浮腫の程度は比較的軽度であり, シャム群に近い組織像を呈した.一方, 対照群では, 炎症細胞浸潤, 壊死, 浮腫など強い炎症所見が認められ, 治療群とは著しく異なった所見を呈した.これらの所見より虚血再灌流障害実験モデルにおいて, 抗LECAM-1抗体による抗炎症作用が示唆された.

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