健常例におけるFunctional MRIを用いた被験者実演課題に関する研究

書誌事項

タイトル別名
  • INFLUENCE OF SUBJECT-PERFORMED TASKS ON MEMORY IN HEALTHY INDIVIDUALS USING fMRI STUDY
  • 健常例におけるFunctional MRIを用いた被験者実演課題に関する研究--言語課題と被験者実演課題の比較
  • ケンジョウレイ ニ オケル Functional MRI オ モチイタ ヒケンシャ ジツエン カダイ ニ カンスル ケンキュウ ゲンゴ カダイ ト ヒケンシャ ジツエン カダイ ノ ヒカク
  • Comparison of Verbal Tasks with Subject-performed Tasks
  • ―言語課題と被験者実演課題の比較―

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抄録

被験者実演課題(Subject-performed tasks:以下SPT)は記銘学習の際,実物を用いた実演を通じて記憶する方略で,言語だけで記銘する言語課題(Verbal-tasks:以下VT)よりも再生レベルが高いとされている.これらは被験者実演効果(以下SPT効果)と呼ばれている.このSPT効果の理由としては,実演の際,視覚や聴覚,運動感覚,触覚など複数のモダリティーを用いて符合化することが有効であるという説や,運動プログラムなどの構成要素に効果が起因する説など,いくつかの説が提出されているが,その詳細な脳内基盤は明らかとなっていない.そこで本研究では,SPT効果のメカニズムを検討する目的で,学習時にVT条件とSPT条件で記銘し,fMRIを用いて再認時の各条件における脳内賦活部位を撮像し,比較検討を行った.functional MRI(fMRI)撮像には1.5T GE SIGNA MRIを用い,撮像条件はvoxel size 4.7×4.7×5.5,TR=3sec,TE=60msec,EPI BOLD法とした.被験者は右利き健常者8名(平均年齢59.4歳)であった.まず,行為文の学習をVT条件 (文字・音声呈示),SPT条件 (文字・音声呈示+物品+被験者の実演)の2条件で実施した.その後20分の休止をおき,記銘した行為文と同数のディストラクターを含む行為文の再認をfMRI (Event-design) 撮像下で実施した.行動指標では,VT条件よりSPT条件で再認正答率が高かった.fMRIにおいては,VT条件での再認では,両半球ともに有意な賦活が認められなかったにもかかわらず,SPT条件では,左右補足運動野および左の中心前回,中心後回で顕著な賦活が認められた.さらにSPT-VT条件では補足運動野に加えて縁上回での賦活も認められた.左右の運動野に賦活が認められたことから,SPT条件の再認の検索時に運動の再現が行われた可能性が示唆された.また,VT条件では認められなかった縁上回での賦活については,SPT条件での学習の際,被験者自身の行為の実演によって,運動覚を介して得られた視覚,触覚,物品に関する情報,さらに空間感覚および体性感覚情報などの多感覚から受容した複数のモダリティー情報が縁上回で統合され,再認時の検索に効果的に作用したことが,SPT効果に結びついたと考えられた.

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