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- 吉田 明広
- 昭和大学医学部形成外科学教室
書誌事項
- タイトル別名
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- STUDY OF UPPER VERMILION'S SHAPE
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説明
上口唇赤唇部は上唇における自由縁を形成し個人の顔貌を印象づけるのに大きな影響を与える解剖学的要素の一つである.本邦において口唇の形態計測は, 1922年大杉が日本人の口裂幅等について報告して以来, 過去数多くなされてきた.今回, 著者は現代日本人健康成人男女100名 (平均年齢; 男性29.6歳, 女性26.8歳) の安静時形態を検討し, 上口唇赤唇部の形態について過去の統計との比較をすると共に, 形態分類にとって重要な要素である角度に着目し, 上口唇赤唇部の外形線が作る主要部分の角度を計測し検討した.規格写真撮影を行い, 基準点を設定し, 写真上にて上口唇の形態を直接計測した.平均値と標準偏差を求め男女差, 年代差, 相関を比較検討した.男女間では, 上口唇赤唇部内側斜径, 口裂幅径で有意に男性が長く (p<0.01) , ∠β, ∠γは有意に女性が大きかった (P<0.05) .その他の上口唇赤唇部高径, 上口唇赤唇部最大高径, ∠α, ∠δには統計学的有意差は認めなかった.年代間の相違については, 20代と30代の間には計測した総ての項目で統計学的有意差は認められなかった.上口唇赤唇部高径と上口唇赤唇部最大高径との問には, 男女とも高度な正の相関が見られた.故に上口唇赤唇部の厚さの個体差の比較にはどちらの計測値を用いても問題はないと思われる.しかし, 上口唇赤唇部最大高径の方が上口唇赤唇部の厚さの評価には, 適していると思われた.∠αと∠βにも, 男女ともに相関関係が見られた.∠αが大きい人は, ∠βも大きくなり, 赤唇縁がより不鮮明になると思われた.本研究の結果から現代日本人の上口唇は厚く, 上口唇結節は薄く, かつ口裂は狭い傾向が見られた.また, 男性は女性に比べ∠αが大きく∠βと∠γが小さいため赤唇縁の外側が急峻で正中部が厚い印象を与えると思われた.逆に女性では外側がなだらかでふっくらし, 正中部では薄い印象を与えると思われた.
収録刊行物
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- 昭和医学会雑誌
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昭和医学会雑誌 52 (2), 129-140, 1992
昭和大学学士会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001204835891840
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- NII論文ID
- 130001827015
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- ISSN
- 21850976
- 00374342
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可