高位食道再建術に関する実験的・臨床的検討

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • EXPERIMENTAL AND CLINICAL STUDY OF UPPER ESOPHAGEAL RECONSTRUCTION
  • —Evaluation of Viability of Gastric Tube made with Autoclip Applier and Observation of Wound Healing—
  • ―自動縫合器を用いた大彎側細径胃管―

抄録

頸胸部食道切除後の高位食道および咽頭再建術に対応するための挙上胃管作製に関して, 1. Viabilityを温存した胃管延長, 2.食道胃管端側吻合にともなう胃管先端部血流量低下の回避, 3.簡便な作製手技の確立を目的に実験的・臨床的検討を行った.胃管作製は自動縫合器 (GIA (R) ) を小彎側離断部の縫合に用い, 中間部で最も細く3cm, 先端部で5cm幅の大彎側細径胃管とした.胃管の挙上性およびviabilityの検討は, 雑種成犬 (n=12) と食道切除患者 (n=7) を対象に, 全胃管から大彎側細径胃管を作製し, その延長率および両群の胃管長径 (幽門輪からの距離) と血流量 (レーザードップラー法) を比較した.さらに実験犬において大彎側細径胃管の自動縫合部に漿膜筋層縫合を付加した群 (n=6) では胃管長径の短縮率を算出した.次に, 実験犬を対象に, 自動縫合創 (stapleによる外翻縫合) の安全性を検討するために同部の創傷治癒過程を組織学的に観察し (n=20) , 漿膜筋層縫合付加前 (n=15) 後 (n=16) の耐圧性 (air infiltration) を比較した.その結果, 実験犬では, 胃管長径は細径胃管26.8±3.4cm, 全胃管19.9±1.7cm (P<0.01) , 延長率は34.5±9.6%であった.臨床例では, 長径はそれぞれ38.2±3.2と26.4±1.9cm (P<0.01) , 延長率は39.6±5.1%であった.漿膜筋層縫合付加後の短縮率は7.7±0.8%であった.血流量は, 実験犬において, 細径胃管先端部 (25cm) は3.69±0.48voltで, 全胃管先端部 (20cm) の2.58±0.32voltより高値 (P<0.01) であった.臨床例では, 細径胃管の先端部付近 (35cm) は3.66±0.23voltであり, 全胃管先端部付近 (25cm) の3.64±0.01voltと差を認めなかった.また, 細径胃管において胸骨後経路挙上後の先端部血流量は前値より21.2±8.9%低下した.縫合創の治癒過程は, 5日目では接着された粘膜が脱落し, 粘膜下層に血管新生と肉芽組織が増生した.7日目では粘膜下と筋層が層々縫合の形態に近づき, 粘膜下層では線維化と血管連結が認められた.14日目では線維化が高度となり, 粘膜は上皮化した.耐圧値は, 7日目で自動縫合単独120.0±26.6mmHg, 漿膜筋層縫合付加176.1±29.8mmHgと差 (P<0.01) を認めたが, 14日目では231.4±24.1, 247.8±16.8mmHgと差がなかった.以上より, 大彎側細径胃管は胃管延長とviability温存に優れ, 高位食道再建に適応し得ると考えられた.自動縫合創の癒合は組織学的には14日目には完成したが, 術後早期には胃管内の充分な減圧が必要と考えられた.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001204836403840
  • NII論文ID
    130001825171
  • DOI
    10.14930/jsma1939.55.593
  • ISSN
    21850976
    00374342
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ