ラット肝中MAOに対する温度の影響

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タイトル別名
  • EFFECTS OF INCUBATION TEMPERATURE AND HEAT TREATMENT OF RAT LIVER MONOAMINE OXIDASE
  • ラット肝中MAOに対する温度の影響〔英文〕
  • ラット カンチュウ MAO ニ タイスル オンド ノ エイキョウ エイブン

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抄録

ラット肝ミトコンドリアMAOに対する温度の影響を, 酵素反応中の温度の変化と, 熱処理による方法から検討した.<BR>MAO活性はクラークの酸素電極を用い, ポーラログラフ法により測定した.<BR>Tyramineを基質とした場合, 反応槽中の温度を30℃まで上昇させるに従ってMAO活性は増大したが, 30゜~35℃ではその活性は変化せず, 40℃まで上昇させると再びその活性は増大した.しかし, 40℃以上ではMAO活性は徐々に減少した.Serotoninを基質とした場合もtyramineの場合とほとんど同様の曲線を示したが, 40℃以上の温度でもMAO活性はなお増大する傾向を示した.Benzylamineおよびβ-Phenylethylamineを基質とした場合, 反応槽中の温度を35℃~40℃まで上昇させるにつれ, MAO活性も増加したが, それ以上の高温では活性は逆に低下した.これらの場合の温度係数を算出したところ, tyramineおよびserotonin, benzylamineでは, それぞれ1.2~1.7および0.75~1.6であった.一方β-phenylethylamineでは1.0~1.95と他の基質の場合に比べ高値を示した.このことは, β-phenylethylamineを基質とした場合は, 他の基質の場合に比較して高活性エネルギーを必要とすることを示唆している.<BR>ラット肝ミトコンドリアを, 50℃, 55℃, および60℃で10分間熱処理し, それらの残存MAO活性をtyramine, serotonin, benzylamineおよびβ-phenylethylamineを基質として検討した.Tyra-mineおよびserotoninを基質とした場合, 熱処理の温度が高くなるにつれMAO活性は低下し, 60℃10分間の熱処理で完全に失活した.Benzylamineおよびβ-phenylethylamineを基質とした場合は, 50℃10分間の熱処理で約50%の活性が減少し, 55℃10分間の熱処理で完全に失活した.すなわち, tyramineおよびserotoninを基質とするMAOは比較的熱に安定であるが, benzylamineおよびβ-phenylethylamineを基質とするMAOは熱に不安定であった.<BR>高温度におけるMAO活性の減少は反応溶液中の酸素濃度の低下によるものか, 酵素蛋白の変性によるものかを検討した.すなわち38℃および50℃に保温された反応溶液に酸素を飽和させ, それぞれの温度におけるMAO活性を比較した.Tyramine, serotoninおよびbenzylamineを基質とした場合は, 30℃の場合よりも50℃においてより高い活性を示した.一方, β-phenylethylamineを基質とした場合は, 38℃の場合の方がより高い活性を示した.すなわち, 高温度下におけるtyramine, serotoninの場合のMAO活性の減少は, 反応液中の酸素濃度の減少によって惹起されたものであろう._一方, 高温度下におけるβ-phenylethylamineの場合のMAO活性の減少は酵素蛋白の変性によるものと思われる.以上の結果から, ラット肝ミトコンドリアには, 二つの異なったMAOが存在する可能性が示唆された.

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