希少呼吸器疾患の治療・管理

  • 谷本 安
    岡山大学病院 呼吸器・アレルギー内科
  • 谷本 光音
    岡山大学病院 呼吸器・アレルギー内科

書誌事項

タイトル別名
  • The care of rare respiratory diseases in Japan

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説明

特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias: IIPs)は,おもに胞隔を炎症・線維化病変の場とする 疾患である間質性肺炎の中で,原因が特定できないも のの総称であり,厚生労働省特定疾患に指定されてい る.全国の特定疾患医療受給者証交付数は2005年度以 降,4,000~5,000を推移している.IIPs には7つの病 型があるが,そのうち IPFは頻度が最も高く,かつ予 後不良な疾患である.慢性進行性の経過をたどり,高 度の線維化が進行し,不可逆性の蜂巣肺形成をきたす 難治性疾患であり,診断時からの平均生存期間が概ね 5年とされている.2000年に米国胸部疾患学会(ATS) から発表された IPFのコンセンサスステートメント, 引き続いて2002年に発表されたATS/欧州呼吸器学会 (ERS)による IIPs 分類のステートメントにより, IIPs の国際的な分類・診断基準となるものが策定さ れた.我が国においても2003年にATS/ERS ステート メントとの整合性をもって IIPs の分類・診断基準の 第4次改訂がなされ,2004年に「特発性間質性肺炎 診 断と治療の手引き」が日本呼吸器学会から発行され た.IIPs の確定診断には,膠原病や薬剤など原因の 明らかな間質性肺炎や他のびまん性陰影を呈する疾患 を除外することが重要である.さらに,原則として外 科的肺生検による病理組織診断に基づくが,IPF に限 っては高分解能CT(HRCT)によって蜂巣肺等の典 型的所見が確認できる場合,病理組織診断なしに診断 可能とされている(図1). IPF の原因は不明であるが,種々の外因的,あるい は内因的刺激により肺胞上皮や基底膜が傷害され,そ の修復過程における線維芽細胞の増殖や細胞外マトリ ックスの過剰な増生によって線維化病変が形成され, 肺の硬化により呼吸機能障害が惹起される.これま で,IPF の生存率やQOLに対する有効性が明確に証 明された薬物療法はなく,進行性に悪化する IPFに対 して,副腎皮質ステロイドと免疫抑制薬(シクロフォ スファミド,アザチオプリンなど)の併用が推奨され てきた.しかしながら,これらはいずれも炎症過程の 抑制作用が主体であり,線維化を阻止または改善する ものではなかった.従って,IPF の治療には,抗炎症 作用のみならず,慢性進行性の線維化を抑制する作用 のある薬剤が望まれてきた.近年,PFDやインターフ ェロン-γなどの抗線維化薬,あるいはN-アセチルシ ステイン(NAC)などの抗酸化薬が治療薬として注目 されている(図2). 岡山医学会雑誌 第123巻 April 2011, pp. 49-52 難 病 へ の 取 り 組 み

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