人格と精神病理の精神生物学的モデル : 臨床使用のための基本的な知見(第37回日本心身医学会総会)

書誌事項

タイトル別名
  • A Psychobiological Model of Personality and Psychopathology
  • 招待講演:人格と精神病理の精神生物学的モデル--臨床使用のための基本的な知見
  • ショウタイ コウエン ジンカク ト セイシン ビョウリ ノ セイシン セイブツ

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抄録

人格の7次元モデルは人格障害のすべてについて効率的に鑑別診断し, さらに精神身体疾患を含むほかの精神障害の併害を説明する。人格障害の有無は自己志向(self-directedness), 協調(cooperativeness)と自己超越(self-transcendence)といった性格特性の未発達さによって示唆される。人格障害の特殊な亜型の有無は新奇性追求(noveltysee-king), 損害回避(harm avoidance), 報償依存(reward dependence)と固執(persistence)といったものを含む気質特性のプロフィールにより示唆される。7つのすべての特性は, 「気質性格検査(Temperament and Character Inventory;TCI)」と呼んでいるテストを用いて面接によるか, 自分で質問表に記入することで評価できる。TCIを使用した場合, 気質のそれぞれのタイプが特定化できるので相互に排他的となり, 多くの重複診断を避けることが可能である。気質特性はそれぞれ約50%の遺伝性(heritability)を有し, 遺伝学的には均質で独立している。性格特性の形態は, 精神分裂病, 気分障害と精神身体疾患を含む精神障害に対する感受性を決めている。たとえば, 「タイプA」を示す冠動脈不全の傾向のある人は敵意(低い協調), 慣習的(低い自己超越)と自己主張(高い自己志向)を示す。メランコリー性格はこれら3つのすべての性格次元で低く, 一方, 創造的な性格は3つすべてにおいて高い。循環気質者は自己超越と協調で高いが, 自己志向では低い。分裂病型者は自己超越で高いが, 他の2つの性格次元で低い。TCIは正常および異常人格に対する神経生物学的, 精神力動的, 社会文化的, そして認知行動的なアプローチを統合する概念的規範のうえに基礎をおいている。また, TCIはDSMの第I軸と第II軸の精神障害について実践的で信頼性と妥当性のある臨床鑑別診断法を提供するものである。

収録刊行物

  • 心身医学

    心身医学 37 (2), 91-102, 1997

    一般社団法人 日本心身医学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (10)*注記

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