房室ペーシングに対する至適A-V delayの検討 : 特に急性虚血心,非虚血心の検討

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  • Assessment of Optimal A-V Delay in Dual Chamber Pacing for Acute Ischemic and Non-ischemic Hearts

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説明

最適な左心機能および心拍出量を得るための,徐脈性心疾患に対するペースメーカの適応は,心房収縮機能を有した房室ペーシング(Dual chamber pacing: DCP)の植込みが主流となってきている。しかし,最適な左心機能を維持するための至適な心房心室収縮遅延(至適A-V delay)には,多くの問題がある。筆者は洞性徐脈および房室ブロック作製雑種成犬に対し,左冠動脈前下行枝を第2対角枝分枝後の部位で結紮し,dyskinesisを示す急性虚血心を作製した。この標本にDCPを行なって,一回心拍出量,左室収縮期圧,左室peak dp/dt,左房圧,右房圧,左仕事量を指標にして急性虚血心に対する至適A-V delayを非虚血心と比較した。非虚血心一回心拍出量は,洞調律時を基準として,A-V delay 100msで101.9±6%と最大となり(P<0.05),急性虚血心一回心拍出量ではA-V delay 300msで91.6±5%と最大となった(P<0.01)。急性虚血心においては,非虚血心で最大の一回心拍出量を示したA-V delay 100msでは,虚血による左室compliance,心収縮力の低下によってSVは低下し,A-V delay 300msにおいては心房収縮が左室急速流期の近傍に起るため,SVが最大になったものと思われた。非虚血心では,左室peak de/dt,左室仕事量は一回心拍出量とほぼ同様の変化を示し,急性虚血心では有意な増減を認めなかった。これはdyskinesisのために,その増加が相殺されたと考えられた。以上の実験結果より,急性虚血心に対するDCPでは,至適A-V delayは,非虚血心に比較してより延長されるべきであると結論された。

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