老年で発症した多発性硬化症の一剖検例

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タイトル別名
  • An Autopsy Case of Multiple Sclerosis with Late Onset of Symptoms
  • ロウネン デ ハッショウシタ タハツセイ コウカショウ ノ イチボウケンレイ

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抄録

老年初発の多発性硬化症は比較的少なく, 本邦でも剖検による確定診断例は3例にすぎない。一般に晩発例は, 脊髄症状で初発し, 寛解を示さず慢性進行性の経過を示すものが多いとされ, このため生前診断が困難であることが多い。我々が経験した69歳初発例は, Th7以下の脊髄横断症状で発症しステロイド剤により寛解を示した。以後数回の再燃・軽快の反復の間に視神経・球麻痺症状, 意識障害等が順次出現進行し1年4カ月の経過で死亡した。病理組織学的検索では, 大脳皮質, 内包, 被殻, 淡蒼球, 延髄, 脊髄, 視神経に多発する新旧種々の小脱髄巣が認められた。長期にわたり存在したと考えられる陳旧病巣はなく, 老年発症という臨床的特徴は病理組織学的にも, ほぼ支持されるものと考えられた。慢性進行型が特徴とされる晩発例においても若年初発例と同様の経過を示す例がみられることを示し, 老年発症の要因等について文献的に考察した。

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