放射線汎心炎の病理 : 心臓部に放射線治療を受けた悪性腫瘍 34 剖検例の心臓病変

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タイトル別名
  • Pathology of Radiation Pancarditis; Cardiac Lesions in Thirty-four Autopsy Cases of Malignant Tumors Following Radiation Therapy to Portion of the Heart
  • ホウシャセン ハン シン エン ノ ビョウリ シンゾウブ ニ ホウシャセン チ

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抄録

心臓部に放射線照射治療を受けた悪性腫瘍34剖検例(食道癌19例, 左乳癌8例, 左肺癌7例と, 対照剖検例(右胸部照射悪性腫瘍, 非照射悪性腫瘍夫々11例)の心臓を検索し, 放射線傷害の指標とみなされる病変を考察した。1. 心電図異常は11例, そのうち洞性頻脈は8例みられ, 心筋層における毛細血管の洞状拡張を認めるものに多い。胸部X線写真による中央陰影拡大は5例で, 心外膜炎をみとめるものに多い。2. 病理解剖学的に, 線維素性心外膜炎, 心筋線維間浮腫, 心筋の融解・壊死, 心内膜における浮腫と軽度の細胞浸潤など汎心炎の像が認められた。これは心臓全層における放射線の直接傷害と, 循環障害にもとづく変化が加わったものと思われる。また電顕的に, 心筋ミトコンドリアの増生・集簇, 二重膜の融合, 3.8μに達する巨大ミトコンドリア形成がみられ, これも放射線傷害の所見である。心筋糖蛋白体変性と心筋線維化の頻度と程度は, 心臓部照射群と対照群との間に差異はない。しかし線維化が心外膜直下の心筋層に多いことは, 放射線傷害の影響と思われる。3. 放射線心外膜炎はもっとも著明に起こり, 食道癌の症例において頻度が高い。これは食道癌の放射線治療における合併症として留意すべきことであろう。

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