我が国に分布する他 2 種のゴケグモ毒腺タンパク質に対するセアカゴケグモ抗毒血清の反応性

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タイトル別名
  • Reactivity of an antivenom against the red-back spider, Latrodectus hasseltii, to venom proteins of two other species of Latrodectus introduced to Japan

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抄録

1995年に大阪で発見されたセアカゴケグモ以外にも横浜市, 那覇市などではハイイロゴケグモが, また, 八重山諸島には未だ分類が確立していないLatrodectus sp.(仮称ヤエヤマゴケグモ)が分布することが明らかになっている。セアカゴケグモの毒性は, マウスを用いた毒性試験およびオーストラリアでの咬症の報告から一般的に強いと考えられ, 我が国では全国4カ所にオーストラリアで製造されているセアカゴケグモ抗毒血清が突発的な咬症発生の対策上準備されている。しかし, この抗毒血清のセアカゴケグモ以外のゴケグモに対する治療効果は不明であり, 治療に使用が可能か否かの科学的根拠も明らかになっていない。そこで, ハイイロゴケグモとヤエヤマゴケグモ(仮称)の毒腺抽出物中のタンパク質と抗毒血清との反応性を調べた。その結果, セアカゴケグモの毒腺タンパク質に対して抗毒血清中のウマIgG抗体が強く結合し, ハイイロゴケグモの毒腺抽出物中のタンパク質のうちα-ラトロトキシンに対して若干弱い結合が認められた。ヤエヤマゴケグモの毒腺抽出物に対しては反応が弱いように見えたが, その結合の弱さはα-ラトロトキシンと考えられる110-120kD領域にみられるバンドのタンパク質量に起因していると考えられた。各々のゴケグモ種に対する抗毒血清が製造されていない現状を考えると, ヤエヤマゴケグモおよびハイイロゴケグモによる突発的な咬症による重症例において, 現在準備されているセアカゴケグモ抗毒血清を治療に使用できると考えられる。

収録刊行物

  • 衛生動物

    衛生動物 49 (4), 351-355, 1998

    日本衛生動物学会

参考文献 (11)*注記

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