羽音トラップによる雄蚊の誘引実験

書誌事項

タイトル別名
  • Acoustic attraction of male mosquitos in a cage
  • 羽音トラップによる雄蚊の誘引実験〔英文〕
  • ハオト トラップ ニヨル ユウカ ノ ユウイン ジッケン エイブン

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説明

雄蚊の羽音が雄蚊を誘引するという報告は古く, 羽音と関連した交尾行動を報告した論文は多い。しかし羽音を蚊の駆除に利用した報告は極めて少ない。本実験は, 最初に生態の異なる4種の蚊の羽音の基音周波数の分布を測定した。次に発振器を使用し, 各種, 雌雄の平均周波数の音を発生させ, 雌雄200匹の蚊を入れた30cm立方のケージから雄蚊の抽出を行った。ネッタイシマカ, ヒトスジシマカでは466Hz, 462Hzの雌蚊の周波数音を, 15分ずつ1日48回発生させ, 3∿4日間, 雄蚊を抽出したところ, 0%, 1.9%の雄蚊が残り, 15.3%, 11.8%の雌蚊が受精された。ところが, An. stephensi (423Hz)とチカイエカ(370Hz)では, 9.2%, 8.7%の雄蚊が残留し, 65.7%, 93.6%の雌蚊が受精された。一方ヒトスジシマカ, An. stephensiでは28.0%, 15.2%の雌が903Hz, 640Hzの雄の羽音に誘引された。これは野外での雄蚊の群飛の音に雌蚊が誘引されることを示唆している。An. stephensiは, 18 : 00の消灯後わずか15分間ゲイトに触角剛毛(fibrillae)を立て, 雌蚊の羽音に反応するので, 1日1回の発振音で, 1日48回の発振音と同率の雌交尾率と雄捕獲率を示した。ネッタイシマカ, チカイエカは4 : 00(点灯), 18 : 00(消灯)前後に交尾活動ピークがあり, しかも明暗期を通じて, 少率ではあるが交尾活動を行った。いずれの種も雄は, ほぼ24時間で尾節(hypopygium)は, 180°の回軸を完了し, An. stephensiを除いて触角剛毛90°の起立を完了し, 交尾可能となった。一方雌は交尾可能になるまでに1∿2.5日間を要した。交尾のための誘引には, 羽音が最も重要で, 揮発性の誘引フェロモンは存在しなかった。

収録刊行物

  • 衛生動物

    衛生動物 32 (1), 7-15, 1981

    日本衛生動物学会

被引用文献 (2)*注記

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