重症卵巣過剰刺激症候群に卵巣破裂を合併し開腹止血術を要した1例

  • 尹 純奈
    地域医療機能推進機構(JCHO)大阪病院産婦人科
  • 福田 綾
    地域医療機能推進機構(JCHO)大阪病院産婦人科
  • 福岡 寛子
    地域医療機能推進機構(JCHO)大阪病院産婦人科
  • 坪内 弘明
    地域医療機能推進機構(JCHO)大阪病院産婦人科
  • 大八木 知史
    地域医療機能推進機構(JCHO)大阪病院産婦人科
  • 和田 あずさ
    地域医療機能推進機構(JCHO)大阪病院産婦人科
  • 梅澤 奈穂
    地域医療機能推進機構(JCHO)大阪病院産婦人科
  • 筒井 建紀
    地域医療機能推進機構(JCHO)大阪病院産婦人科

書誌事項

タイトル別名
  • Laparotomic hemostatic surgery for ovarian rupture complicated with severe ovarian hyperstimulation syndrome: a case report
  • 症例報告 重症卵巣過剰刺激症候群に卵巣破裂を合併し開腹止血術を要した1例
  • ショウレイ ホウコク ジュウショウ ランソウ カジョウ シゲキ ショウコウグン ニ ランソウ ハレツ オ ガッペイ シ カイフク シケツジュツ オ ヨウシタ 1レイ

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抄録

<p>卵巣過剰刺激症候群(以下 OHSS)の症状として腹痛や腹部緊満感を認めることがあるが,OHSS に卵巣破裂を合併した場合,その症状が特異的でないために原因が卵巣破裂によるものと気がつかず,診断が遅れ,危機的な状態に陥る可能性がある.今回,重症 OHSS に合併した卵巣破裂により急激な貧血の進行を認め,開腹止血術を要した1例を経験したので報告する.症例は34歳未経妊.前医にて原発性不妊症および多嚢胞性卵巣症候群の診断の下,assisted reproductive technology(以下 ART 治療)が実施された.GnRH agonist long protocol による調節卵巣刺激が行われ,採卵および顕微授精(ICSI)を実施したが分割期胚は得られず,胚移植は行われなかった.その後,嘔気と腹部膨満感が出現し,採卵後 5 日目に重症 OHSS の診断にて当院に緊急搬送となった.来院時,腹部は緊満し,腹部超音波検査にて両側卵巣腫大(右卵巣 9.5 cm,左卵巣 11.6 cm)および著明な腹水貯留を認めた.入院加療を開始したが,入院2日目にヘモグロビンの低下,腹痛増悪,呼吸困難を呈したため腹水穿刺を施行し,血性腹水 1500 ml 採取した.その後ヘモグロビン 6.1 g/dl とさらに低下したため,持続的な腹腔内出血を疑い,輸血を開始した.同時に出血部位同定のため腹部造影 CTを行い,20 cm大に腫大した左卵巣より活動性の出血を示唆する所見を認めたため,卵巣破裂の診断の下,緊急開腹術を実施した.開腹時,腫大した左卵巣の一部が破裂し静脈性の出血を認めたため同部位を止血した.術後全身管理目的に ICU 入室した.肺水腫を合併するもその後の経過は良好であり,入院 12 日目に卵巣縮小を確認し退院となった.重症 OHSS に伴う合併症として卵巣破裂は比較的まれであるが,重症 OHSS の管理中に腹痛増悪,呼吸困難,および急激な貧血の進行を認めた場合は,卵巣破裂も念頭に置いた迅速な診断・治療が必要であると思われる.〔産婦の進歩69(2):100-106,2017(平成29年5月)〕</p>

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