医師主導臨床研究を成功させるために

  • 針谷 正祥
    東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科薬害監視学講座

書誌事項

タイトル別名
  • TOWARD A SUCCESS OF INVESTIGATOR INITIATED STUDY
  • イシ シュドウ リンショウ ケンキュウ オ セイコウ サセル タメニ

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抄録

Evidence-based medicineで最も質の高いエビデンスは二重盲検プラセボ対照試験(RCT)の系統的レビューであり,多くの場合にRCTは製薬企業による臨床試験で実施され,十分な研究資金と人的資源が投入される.これに対して,医師主導臨床研究では資金・人材ともに制限がある場合がほとんどであり,研究を成功させるためには研究テーマの選択,計画立案,実施体制構築,研究実施,データ収集,データ解析,論文化の一連のプロセスを十分検討し,ピットフォールを理解しておく必要がある.まず研究テーマの選択では,明快なリサーチ・クエスチョンを作成することが最も重要であり,研究の成否を決めると言っても過言ではない.優れたリサーチ・クエスチョンはfeasible,interesting,novel,ethical,relevant(S.B.Hulley)の5要素を満たすと言われる.リサーチ・クエスチョンを作成し,構造化する過程で,その研究に最も適した対象患者群,研究デザイン,比較対象群,主要評価項目などの研究計画の骨子を決定することができる.次に,研究計画の科学性を裏付けるために,統計学的な検討を行う.優秀な生物統計学者の協力を常に仰げるとは限らないため,臨床研究を企画する全ての研究者は,生物統計学の基本的な考え方と手法を身につけておく必要がある.介入研究・観察研究のいかんに関わらず,目標症例数の算出には統計学的な検討は必須である.同時に,主要評価項目に設定した変数の統計学的な性質や予想される結果に基づいて解析計画を事前に立案することは,臨床研究を成功させるための重要なステップになる.研究を実施しデータを収集する段階では,共同研究者のモチベーションを維持し,必要とする症例数とデータの質を確保できるように努め,実施後は速やかにデータを解析し,論文化する.さらに,研究者は自ら実施する臨床研究に関連する倫理指針を十分理解し,研究の全過程を通じて指針を遵守しなければならない.本稿では,医師主導臨床研究の初級から初中級レベルの研究者を対象に,医師主導臨床研究を成功させるポイントを解説した.

収録刊行物

  • アレルギー

    アレルギー 60 (11), 1527-1531, 2011

    一般社団法人 日本アレルギー学会

参考文献 (4)*注記

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