わが国における頭頸部癌診療をどのように構築すべきか―大阪府のがん診療連携体制をもとに―

  • 吉野 邦俊
    地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター耳鼻咽喉科

書誌事項

タイトル別名
  • ワガクニ ニ オケル トウケイブガン シンリョウ オ ドノ ヨウ ニ コウチク スベキ カ オオサカフ ノ ガン シンリョウ レンケイ タイセイ オ モト ニ

この論文をさがす

抄録

頭頸部癌診療においても標準治療が担保され, 場合によって先進医療が受けられることや, 癌難民を作らない切れ目のない医療が求められる. そのためには癌診療のネットワークを構築する必要があるが, 現在, 国が推進している「がん対策推進基本計画」に沿った「がん診療連携体制」を活用したネットワーク作りが合理的かつ現実的と思われる. ネットワークの要となるのは, 今年度からスタートした頭頸部がん専門医制度における「頭頸部がん研修認定施設」である. 大阪府では現在までに認定された12施設のうち11施設は国指定の「がん診療連携拠点病院」でもあり, ネットワーク構築には好都合である. そして, 頭頸部癌は数が少ないことや人的資源の不足を考えると, 集学的治療の診療体制が整ったこのような病院への頭頸部癌治療の集約化が必要であろう. 治療後の経過観察, 経口抗癌剤の投与, 検査, 各種の支持療法, 緩和ケアなどは, 地元の一般病院や開業医との連携, すなわち病病連携, 病診連携を行うシステムが構築されれば, 患者にとっても便利で切れ目のない医療が期待できる. 連携を確かなものとするためには, 5大癌 (肺, 胃, 肝, 大腸, 乳腺) と同様に頭頸部癌についても統一型の地域連携パスの作成, 運用が好ましい.<br>このようなシステムが有効かつ効率的に機能するかどうかは, ひとえに実際に診療に携わる医療者にかかっている. しかし, 現状の耳鼻咽喉科医の不足, ひいては頭頸部がん専門医の不足は深刻であり, 頭頸部がん専門医制度の促進や耳鼻咽喉科医の増加, ボトムアップなど人材育成が喫緊の重要課題といえる. 今後状況が改善され, 質の高い医師の増加を期待したい. 状況改善には頭頸部外科に対するインセンティブを高く維持する環境が必要であるが, そのためには専門医に対する正当な評価に基づいた身分的, 経済的な確保がなされることが不可欠であろう.

収録刊行物

参考文献 (4)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ