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- 肥塚 泉
- 聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科
書誌事項
- タイトル別名
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- 第116回日本耳鼻咽喉科学会総会シンポジウム 感覚器の老化と抗加齢医学 : 平衡感覚
- ダイ116カイ ニホン ジビ インコウ カガクカイ ソウカイ シンポジウム カンカクキ ノ ロウカ ト コウカレイイガク : ヘイコウ カンカク
- ―平衡感覚―
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説明
平衡感覚の受容器である三半規管や耳石器からの情報は, 経核, 舌下神経前位核, 前庭小脳などで構成される, 神経積分器の一種である neural store に入力している. neural store には前庭系からの入力以外に, 体性感覚情報 (深部知覚情報) や視覚情報も入力している. これら3つの感覚情報が neural store で統合処理されて平衡感覚が保たれている. 前庭神経核から入力を受ける前庭視床は, 頭頂―島前庭皮質 (PIVC) や VIP 野など複数の大脳皮質領域に前庭感覚情報を送っている. 海馬にも前庭系からの入力がある. 末梢前庭系においては加齢に伴う変性と萎縮は耳石, 有毛細胞から前庭神経まで前庭器全体に及ぶ. 半規管動眼反射の利得は, 低周波数領域については高齢者でも比較的保たれる. 高周波数領域については80歳を超すと徐々に低下する. oVEMP と cVEMP の振幅は50歳を超すと徐々に低下する. 眼では調節力の低下, 網膜感度の低下などが生じる. 深部知覚情報も加齢により変化を受ける. 高齢者では, 深部知覚情報に対する依存度が高まる傾向を示す. neural store を構成する小脳の Purkinje 細胞のニューロン数に関しては, 加齢による変化を認めない. しかしながら細胞体の体積は加齢により減少する. PIVC や VIP 野に障害が生じると, 垂直位の偏倚, 半側空間無視などの空間識障害などが生じる. 高齢者におけるめまい・平衡障害は転倒のリスクファクターの一つである. 高齢者においては, 生活習慣病などの全身疾患の合併もしだいに多くなるなどの理由により, めまい・平衡障害の病態は, 末梢前庭系や中枢前庭系のみならず, 多モダリティ感覚領域や出力系である筋肉を含む, “平衡維持システム” 全体の障害としての理解が必要となる. 加齢に伴う平衡感覚の低下に対してはめまいリハビリテーションが有用である. 高齢者においては出力系である筋肉にもサルコペニアが生じる. これに対しては, レジスタンストレーニングが推奨されている.
収録刊行物
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- 日本耳鼻咽喉科学会会報
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日本耳鼻咽喉科学会会報 119 (2), 87-93, 2016
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205012220032
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- NII論文ID
- 130005132681
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- NII書誌ID
- AN00191551
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- ISSN
- 18830854
- 00306622
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- NDL書誌ID
- 027131379
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- NDLサーチ
- Crossref
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可