耳科学の歩みとともに

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タイトル別名
  • 最終講義 耳科学の歩みとともに : 耳鼻科医としての40年間を振り返って
  • サイシュウ コウギ ミミ カガク ノ アユミ ト トモニ : ジビカイ ト シテ ノ 40ネンカン オ フリカエッテ
  • ―耳鼻科医としての40年間を振り返って―

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抄録

本稿は著者が愛媛大学で行ってきた耳科学領域の研究成果をまとめ, 最終講義で発表した内容の要約である. 人工内耳の研究では, 内耳電気刺激による動物の聴覚はABRで評価できることを示すとともに, 電極埋め込み部位と電気聴覚閾値の関係, 電極に対する内耳の組織反応, 過大電流刺激時の副損傷などを明らかにした. その後, 海外で開発された single channel や multi-channel の device を聾患者に埋め込み, 電気刺激で実用レベルの聴覚が得られることを確認した. 通産省工業技術院のプロジェクトである人工中耳の研究では, 振動子のデザインや機能評価,臨床試験などを担当し, 試作機完成後は混合難聴患者にこれを埋め込み, 新しい難聴治療の道を切り開いた. 突発性難聴の研究では, 画像検査や血清検査, 遺伝子解析などで本症の病態を探索した. その結果, 本症の発症には PRKCH の一塩基多型 (SNP) が関係しており, 内耳循環障害説が示唆された. さらにスナネズミを用いた実験で, 一過性内耳虚血は内有毛細胞を主に障害すること, 障害メカニズムには ATP 欠乏による energy failure のほかに, 窒素酸化物 (NOx) や活性酸素, glutamate が関与すること, などを明らかにした. また内耳には虚血耐性が備わり内耳を保護していること, 低体温には虚血性内耳障害を防御する効果があること, 内耳低体温療法は臨床的にも有効なこと, などを証明した. 真珠腫と耳小骨連鎖の研究では, 真珠腫遺残の頻度や好発部位, 外耳道骨欠損の発症頻度などを調査するとともに, アパセラム人工耳小骨の開発や骨パテコレクター, 軟骨スライサーの本邦への導入・普及に貢献した. 耳小骨振動の研究では, 耳小骨連鎖は低音域ではピストン様に振動するが, 中高音域では仮想振動軸自体が動く, いわゆる揺動支点の周りを振動することを明らかにした.

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