耳鼻咽喉科と救急医療

  • 菊地 茂
    埼玉医科大学総合医療センター耳鼻咽喉科

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  • ダイ113カイ ニホン ジビ インコウ カガクカイ ソウカイ リンショウ セミナー ジビ インコウカ ト キュウキュウ イリョウ

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抄録

近年, 小児科や産科の救急医療の危機が叫ばれているが, 地域によっては耳鼻咽喉科救急もかなり切迫した状況になっている. 埼玉県では, 夜間・休日の救急診療を行っている施設と医師が極めて少なく, こうした医療機関に救急患者が集中し, 当科においても過去8年間に夜間または休日に救急外来を受診した患者は13,820名を数えた. 疾患別では急性中耳炎が4,999名と最も多く, 以下鼻出血, 咽頭異物, めまい症, 急性咽頭喉頭炎, 外耳炎, 急性扁桃炎, 鼻腔異物, 外耳道損傷, 鼻骨骨折, 鼓膜損傷, 外耳道異物の順であったが, この中で入院を要した患者は561名 (4.1%) であり, 救急外来受診者の多くは翌日の診療でも問題のない軽症例であった.<br>現状では, 医師の高い使命感だけが救急医療の支えとなっているが, 少人数の耳鼻咽喉科医で多数の救急症例を常時診療する体制は, 医師の健康管理や医療安全の面から非常に問題であると言わざるを得ない. このような切迫した状況を改善させるには, 患者への啓蒙活動, 救急科, 内科, 小児科など他科との連携も重要であるが, 何よりも地域医療に関与する人々が問題意識を共有し, 無理がなく効率のよい救急システムを作ることが最重要であり, 開業医を中心とする初期救急に従事する医師, 大学病院や基幹病院の医師を中心とする第二次・第三次救急に従事する医師, そして行政が協力し, 効率的で重層的な救急医療を再構築することが急務であると考える.

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