頭頸部癌治療における粒子線治療の適応 —兵庫県立粒子線医療センターの経験を踏まえて—

  • 村上 昌雄
    兵庫県立粒子線医療センター放射線科 神戸大学大学院医学系研究科放射線医学分野粒子線医学部門

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タイトル別名
  • タ リョウイキ カラ ノ トピックス トウケイブガン チリョウ ニ オケル リュウシセン チリョウ ノ テキオウ ヒョウゴ ケンリツ リュウシセン イリョウ センター ノ ケイケン オ フマエテ

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抄録

粒子線治療はブラッグピークを持つ物理学的特性ゆえに, がん病巣への高度な線量集中が可能で, 高いがん制御率と少ない副作用を両立できる. またRBE (相対的生物学的効果比) は陽子線1.1, 炭素線2から3と見積もられ, X線より優れた生物学的効果を示す. 陽子線または炭素イオン線を用いた粒子線治療は, わが国では2009年現在7施設において稼働し, 最近急速に普及しつつある. 兵庫県立粒子線医療センターは両線種が使用可能な世界唯一の施設で, 2001年開院以来3,000名を超える治療実績がある. 頭頸部腫瘍に対する粒子線治療は, 局所進行癌でも化学療法を併用せず効果が良好で, 口腔・咽頭に照射される場合でも経静脈栄養を必要とする患者はいないことから, 高齢者にも優しいQOL (生活の質) の高い治療を実現できる. 副鼻腔, 唾液腺, 口腔, 咽頭, 聴器から発生した悪性黒色腫, 腺様嚢胞癌, 腺癌など, 扁平上皮癌以外の従来の放射線では抵抗性と考えられる腫瘍にも適応がある. 陽子線と炭素イオン線の線量分割が異なり, 厳密な比較は困難であるが, 全生存率・局所制御率共に線種間の差はなかった. 現在保険診療化に向けた検討が本格化している. また今後, 更なる適応拡大とともに, 装置の普及を目指し, 機器の小型化・低価格化が課題となっている.

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