一側声帯麻痺症例に対する声帯内コラーゲン注入術長期経過の検討

  • 木村 美和子
    東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科 国立国際医療センター戸山病院耳鼻咽喉科・気管食道科
  • 二藤 隆春
    東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科
  • 今川 博
    東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科
  • 田山 二朗
    東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科 国立国際医療センター戸山病院耳鼻咽喉科・気管食道科

書誌事項

タイトル別名
  • Treatment of Vocal Fold Paralysis by Collagen Injection : Long-term Results
  • イッソク セイタイ マヒ ショウレイ ニ タイスル セイタイナイ コラーゲン チュウニュウジュツ チョウキ ケイカ ノ ケントウ

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抄録

声帯内注入術は声帯充填術の一つであり,声帯萎縮による嗄声や誤嚥の改善を目的として行われる。筋層の萎縮を補正するのが基本であるため,反回神経麻痺による萎縮が良い適応となる。注入材料として理想的なものは未だ存在せず,現状ではアテロコラーゲンや自家脂肪,自家筋膜などが用いられるが,それぞれに長所,短所があり,それらを理解した上で使いこなすべきである。アテロコラーゲンは,異種タンパクであるためアレルギー反応の可能性があり,吸収率が高いことから複数回の注入が必要になる等の短所があるが,注入手技が多彩で簡便であるため使用しやすく,外来で局所麻酔下に容易に注入できるという長所がある。今回われわれは声帯麻痺による萎縮に対して声帯内コラーゲン注入術を施行した全症例を2年以上経過観察した群と観察期間2年未満の群とに分けて長期経過を検討した。<br>1990年1月から2005年12月に当科で一側声帯麻痺に対して声帯内コラーゲン注入術を施行し,最低3カ月以上経過観察し得た121名を対象とし,2年以上経過観察した群は39名で,観察期間2年未満の群は82名であった。声帯内コラーゲン注入術を施行後,両群においていずれも最長発声持続時間(以下MPTと略),平均呼気流率(以下MFRと略)は統計学的に有意に改善した。注入前のMPTとMFRを両群で比較すると有意差はなく,注入後も同様に有意差を認めなかった。<br>声帯内コラーゲン注入術を施行した一側声帯麻痺症例を検討し,注入後2年以上経過した群と2年未満の群に分けて音声機能の変化を調査した。その結果,注入後2年以上経過しても,注入前より有意差をもって良好な音声を示し,声帯麻痺症例においては注入されたアテロコラーゲンは長期的にある程度安定した効果が得られると推定された。

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