頸部気管に発生した腺様嚢胞癌の1例

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タイトル別名
  • Adenoid Cystic Carcinoma of the Cervical Trachea-A Case Report-
  • 症例 頸部気管に発生した腺様嚢胞癌の1例
  • ショウレイ ケイブキカン ニ ハッセイ シタ センヨウ ノウホウ ガン ノ 1レイ
  • Adenoid Cystic Carcinoma of the Cervical Trachea—A Case Report—

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抄録

耳鼻咽喉科・頭頸部外科医が,気管癌に遭遇する機会は殆んどない。その初発症状は,気管狭窄,喘鳴,血痰などであり,他科において気管支炎や気管支喘息として診断や治療を受けることが多い。このために診断が遅れ,不幸な転帰をとることも少なくない。今回,われわれは,健康診断で発見された,気管腺様嚢胞癌の症例を経験したので報告する。症例は39歳女性,胸部の異常陰影を指摘され,某大学病院呼吸器外科に紹介された。胸部CTにおいて,前縦隔と右頸部に結節状の陰影を認めた。さらに穿刺吸引細胞診検査により,前縦隔の腫瘤は胸腺腫,右頸部の腫瘤は腺様嚢胞癌と診断された。気管支鏡検査においても,声門直下から第7気管輪にいたる間に,腫瘍の浸潤が確認された。同部位からの生検でも,腺様嚢胞癌と診断された。また,PET/CT検査では,前縦隔と甲状腺右葉の背側に,FDGの集積を認めた。MRIでは,気管の右外側壁から,気管の内外に浸潤する腫瘍を認めた。この腫瘍に対する治癒切除術に際して,アプローチは気管支鏡で腫瘍を認めなかった第7気管輪の下方より開始したが,切除断端は陽性であった。切除マージンは迅速病理を繰り返して決定したが,さらに3気管輪の追加切除を要した。また,右反回神経は,腫瘍に巻き込まれており,上方で甲状軟骨を切除し,喉頭内でその分枝を求めて,頸神経ワナとの吻合により再建した。また,食道への浸潤も全層にわたり認めた。しかし,顕微鏡下に粘膜のみを残す切除を,3 cmあまりにわたって施行することにより対処できた。最終的に気道の切除は,右側では声門の直下で,左側では輪状軟骨の下端から第10気管輪までの切除を要した。気管の再建は,鼻中隔軟骨を用いたDP皮弁により,三段階に分けて形成した。現時点で再発を示唆する所見は認めず,音声は良好 (MPT 20秒) である。silent aspirationもなく経過は順調である。

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参考文献 (16)*注記

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