老化・寿命の分子メカニズムとSir2蛋白の機能

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タイトル別名
  • The Molecular Mechanism of Aging and Longevity and the Function of Sir2 Proteins
  • ロウネン イガク ノ テンボウ ロウカ ジュミョウ ノ ブンシ メカニズム ト Sir2 タンパク ノ キノウ

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抄録

21世紀を迎えた我々は今, 老化・寿命研究の一大転換期にさしかかっている. 分子生物学・遺伝学的手法によってこの複雑な現象にメスが入れられ, 老化・寿命をコントロールしているメカニズムの姿が徐々に現われつつある. その結果, 各生物種によって多種多様である老化・寿命の背景に, 進化的に共通した分子メカニズムの存在が浮かびあがってきている. 本稿では, 新たな老化・寿命制御因子としてSir2と呼ばれる蛋白の機能に焦点をあて, その意外な酵素活性, NAD依存性脱アセチル化酵素活性の老化・寿命のメカニズムにおける重要性を概説する. また最近, 老化・寿命のメカニズムにおける進化的共通項としてインスリン・シグナル伝達系の重要性がクローズアップされつつある. 線虫においてはSir2がこのシグナル伝達系に密接に関係して老化・寿命を制御していることが明らかになっており, おそらく哺乳類でもこのメカニズムは保存されていると予想される. Sir2はNADによって表わされる細胞のエネルギー代謝状態を, ゲノムのクロマチン制御状態に変換する「エネルギーセンサー」として機能している. Sir2はこの機能を通して, 各生物種に特徴的なエネルギー代謝, 特にグルコース代謝の制御系を老化・寿命の制御系へと連結していると考えられる. これらの知見・考察は老化・寿命が「なぜ」進化してきたのかという問題に鍵を与えるものであるが, 一方我々は個体において老化が「どのように」起こるのかについても知らねばならない. この問題に対して最後に, 老化形質の発現にはSir2によるゲノムの silencing が解除していくことが重要であるとする「ヘテロクロマチン・アイランド仮説」について述べる.

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参考文献 (28)*注記

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