書誌事項
- タイトル別名
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- Small G proteins
- その細胞間接着における役割と作用機序
説明
低分子量Gタンパク質 (以下 small Gと略す) は分子量20~30kDaの比較的小さいGTP結合タンパク質の総称で, 細胞内において正確な時間的・空間的秩序のもとで活性化・不活性化されることにより, 細胞内シグナル伝達をダイナミックに制御していることが知られている. Small Gは Ras, Rho, Rab, Arf/Sar, Ran の5つのファミリーに分類されており, 主としてそれぞれ遺伝子発現, アクチン細胞骨格再編成, 小胞輸送, 核-細胞質間物質輸送といった基本的な細胞機能を制御している. 以前より, Rho ファミリーがアクチン細胞骨格再編成を介して細胞運動に関与していることは知られていたが, 近年, Rho や Ras のファミリーに属する small Gが細胞間接着によるシグナル伝達に深く関わっていることが解明されつつある. 細胞間接着は, 個体発生における形態形成だけでなく脳における神経回路網の形成, 炎症, 創傷治癒, がんなど広く重要な生命現象に関与しており, その分子機構を解明することは医学・生物学上極めで意義があると考えられる. 細胞間接着装置の1つとして, 細胞間の機械的な接着を担うアドヘレンスジャンクション (以下AJと略す) が存在し, カドヘリンがその主要な接着分子として知られているが, 私共は最近, AJにおける新しい接着分子としてネクチンを見出し, このネクチンがカドヘリンと協調して細胞間接着の形成に重要な役割を果たしていることを明らかにしている. 隣り合う細胞の表面でネクチン同士が結合すると, Rhoファミリーに属するCdc42と Rac が活性化され, その過程で Ras ファミリーに属するRap1も活性化される. 活性化されたこれらの small Gがフィードバックして細胞間接着を制御している. 本稿では, small Gと細胞間接着との関係について概説する.
収録刊行物
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- 日本老年医学会雑誌
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日本老年医学会雑誌 42 (1), 9-14, 2005
一般社団法人 日本老年医学会