抗GAD抗体陰性かつ抗IA-2抗体陽性を呈した高齢発症1型糖尿病の1例

  • 千葉 優子
    東京都健康長寿医療センター糖尿病・代謝・内分泌内科
  • 鄭 仁熙
    東京都健康長寿医療センター糖尿病・代謝・内分泌内科
  • 金原 嘉之
    東京都健康長寿医療センター糖尿病・代謝・内分泌内科
  • 田村 嘉章
    東京都健康長寿医療センター糖尿病・代謝・内分泌内科
  • 森 聖二郎
    東京都健康長寿医療センター糖尿病・代謝・内分泌内科
  • 井藤 英喜
    東京都健康長寿医療センター糖尿病・代謝・内分泌内科
  • 荒木 厚
    東京都健康長寿医療センター糖尿病・代謝・内分泌内科

書誌事項

タイトル別名
  • A case of elderly-onset type 1 diabetes mellitus: negative for antiglutamic acid dehydrogenase antibody and positive insulinoma-associated tyrosine phosphatase-like protein-2 antibody
  • 症例報告 抗GAD抗体陰性かつ抗IA-2抗体陽性を呈した高齢発症1型糖尿病の1例
  • ショウレイ ホウコク コウGAD コウタイ インセイ カツ コウIA-2 コウタイ ヨウセイ オ テイシタ コウレイ ハッショウ 1ガタ トウニョウビョウ ノ 1レイ

この論文をさがす

説明

症例は83歳,女性.78歳時の健診では空腹時血糖値90 mg/dl,HbA1c 5.7%(NGSP値)であった.80歳時より口渇・多飲・多尿・体重減少を認め,HbA1c 12.2%と高値を指摘され糖尿病と診断された.入院にて加療され,グリメピリド,メトホルミン内服にて血糖コントロールは良好となった.しかし81歳時には随時血糖433 mg/dl,HbA1c 9.2%と再度急激な悪化を認めた.当時抗GAD(glutamic acid decarboxylase)抗体は陰性であり,内因性インスリン分泌の低下は疑われるも1型糖尿病までの診断には至らなかった.インスリンデテミルの自己注射を導入し,内服薬併用で対応した.しかし血糖コントロールは悪化の傾向を認め,83歳時にはHbA1c 10.1%まで上昇した.血糖コントロール及び糖尿病診断及び治療の再評価目的にて入院.抗GAD抗体は再検にても陰性であったが,抗IA-2(insulinoma-associated antigen-2)抗体は50 U/mlと高値を呈していた.空腹時血清C-ペプチド(CPR)は0.2 ng/ml未満で検出されず,グルカゴン負荷試験にても上昇を認めなかった.尿中CPRも10 μg/日以下と,内因性インスリン分泌の低下を来していたことから,1型糖尿病と診断した.疾患感受性遺伝子のHLA DR9が陽性であることも1型糖尿病を示唆した.強化インスリン療法を導入することにより,血糖コントロールは改善を認めた.本症例は高齢発症の1型糖尿病であり,抗GAD抗体は陰性であるにも関わらず,抗IA-2抗体のみ陽性を呈した稀な症例であった.高齢者でインスリン治療が必要な糖尿病の鑑別診断上,抗IA-2抗体の測定が有用であった貴重な1例と考えられた.<br>

収録刊行物

参考文献 (28)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ