認知症の新しい診療ガイドラインについて

  • 冨本 秀和
    三重大学大学院医学系研究科・神経病態内科学

書誌事項

タイトル別名
  • A new diagnostic guideline for dementia
  • ニンチショウ ノ アタラシイ シンリョウ ガイドライン ニ ツイテ

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説明

<p>認知症疾患治療ガイドライン2010が7年ぶりに改訂され,認知症疾患診療ガイドライン2017として平成29年8月に公開された.本ガイドラインは日本神経学会が中心になり,6学会合同の作成委員会が作成にあたった.その主な特徴は,1.Minds 2014に準拠したこと,2.従来の「アルツハイマー病(Alzheimer's disease;AD)」は病理プロセスを指す用語として位置づけ,臨床的なアルツハイマー病を指す用語としてアルツハイマー型認知症に統一したこと,3.アルツハイマー病の新しい診断基準の紹介,4.抗認知症薬4剤の治療アルゴリズムの記載,5.認知症の社会制度・医療資源の項が新たに設定されたこと,などが列挙される.</p><p>認知症疾患治療ガイドライン2010はMinds 2007 に準拠して作成された.ガイドライン2017が準拠するMinds 2014は,システマティックレビューに基づいてエビデンスの総体を評価し,推奨度はエビデンスレベルに加えて負担・費用・患者の価値観の要素を加味して益と害のバランスを考慮しパネル会議で決定した.アルツハイマー病の根本治療薬は近年,その治療標的を早期の病態に移している.疾患プロセスも発症前期(preclinical AD),軽度認知障害(MCI due to AD),認知症(AD dementia)の3ステージに分けられている.ガイドライン2017はこの潮流に沿っており,臨床的に診断されるアルツハイマー病を「アルツハイマー型認知症」の呼称で統一している.抗認知症薬4剤の治療アルゴリズムについては前回のガイドラインで記載ができなかった.2012年のコンパクト版で補遺されたが,正規版に記載されるのは今回が初めてである.また,認知症に起因する社会問題の急増に合わせて2015年に新オレンジプランが策定されたが,本ガイドラインでも社会制度・医療資源の項を独立させて詳細に解説している点は特筆すべきである.</p>

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